読書感想:男女の友情は成立する?(いや、しないっ!!) Flag 1. じゃあ、30になっても独身だったらアタシにしときなよ?

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方は様々な作品において存在する「男子主人公の異性の親友」という立ち位置のキャラについてどう思われるであろうか。もっと具体的に言葉を選ばず言うのであれば、男女の友情というものは成り立つものであると思われるか。

 

男女の友情、それは現実世界でも言葉一つとっても様々な形での友情が存在するものである。では、この作品においての男女の友情を一言で形容するのならばどんな言葉が相応しいであろうか。「戦友」だろうか。はたまた「共犯者」だろうか。もしくは「運命共同体」であろうか。

 

物語の始まる二年の前。とある中学校で一人の少年が壁にぶつかっていた。彼の名は悠宇。将来の夢にフラワーアクセサリーのクリエイターを目指す、花を愛する少年である。

 

しかし彼は、親より提示された条件、中学校の文化祭で自作のアクセサリーを売り切れさせるという条件をかなえられそうにない壁にぶち当たっていた。そんな彼にひょんな事から手を差し伸べる少女が一人。彼女の名は日葵(表紙)。田舎町である舞台では、とてもよく目立つ美少女である。

 

「悠宇さ。30になってもお互い独身だったら、いっそアタシと暮らす?」

 

彼女の協力もあり、無事にアクセサリーを完売させた後、打ち上げの場。二人で夢を語り合い、二人は友情に落ちる。その友情の名は「運命共同体」。悠宇が作って日葵が宣伝し、二人で専門店を開業させるまでを目指す、夢。

 

それから二年。二人は未だ「親友」のままであった。だがそんな二人の関係、主に日葵の友情の歯車を狂わす少女が現れる。彼女の名は凛音。日葵とも小学生以来の幼馴染であり、悠宇の初恋の相手である。

 

凛音が所持していた悠宇の処女作を修理する事から始まり、また絆を紡いでいく悠宇と凛音。どんどんと二人は仲良くなり、アクセサリーのモデルを彼女にも任せるまでになっていく。

 

そんな二人を見て日葵は思った。自分はもう必要ないと。彼の隣には彼女がいればいいと。

 

「―――それはダメ!!」

 

だが、思いとは裏腹に心は素直だ。彼女は気付いてしまったのだ。悠宇の事が本当に好きだったという事を。彼女が本当に求めていたのは友情ではなかったという事を。

 

それでも一度狂った歯車は容易には直せはしない。二人の想いはすれ違い売り言葉に買い言葉、東京に行くとまで嘘をつき日葵は悠宇から離れようとする。

 

「日葵は? フラワーアクセ作れなかったら、俺はいる意味ない?」

 

だけど、悠宇は選んだ。日葵と共に行く事を。そして彼は問いかける。自分と一緒にいる意味は、アクセサリー以外にあるかと。

 

その瞬間、日葵の心中に溢れ出す彼と共にいる事の意味。彼の事が好きだと言う、これでもかというくらいの想い。

 

恋は身体に悪い。まさにその通りである。

 

「悠宇、もうアタシにしときなよ」

 

そして再び、二人の約束は結ばれる。今度は互いの両片思いを芯とした「友情」という名の鎖によって。果たしてそれは幸福か、はたまた不幸か。

 

友情と愛情は紙一重、だからこそこの作品は正に王道ど真ん中で熱い。そしてエモくてエグいのだ。

 

心抉られるほどに王道のラブコメが好きな読者様。友情に主題があげられる作品が好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

男女の友情は成立する?(いや、しないっ!!) Flag 1. じゃあ、30になっても独身だったらアタシにしときなよ? (電撃文庫) | 七菜 なな, Parum |本 | 通販 | Amazon