読書感想:男女の友情は成立する?(いや、しないっ!!) Flag 4. でも、わたしたち親友だよね?〈下〉

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前巻感想はこちら↓

読書感想:男女の友情は成立する?(いや、しないっ!!) Flag 4. でも、わたしたち親友だよね?〈上〉 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、時にふと先日、私がとある読友さんとの会話の中で前巻を読んで主人公である悠宇の株が下がった、ちょっとあの行動はどうかと思ったと言う事をその読友さんが言われていたのであるが、画面の前の読者の皆様の中でその言に共感されると言う読者様はどれだけおられるのであろうか。正直、そんな事を想われても仕方ないのかもしれない。実際、今現在悠宇が行っている事を見ると不義理と言われても仕方のない事なのかもしれない。しかし、彼にとって凜音は「親友」という枠である。だからこそ彼はこんな行動をとってしまっている、とフォローする事も出来るのではないだろうか。

 

 

とにもかくにも、東京と言う未知なる世界。非日常的な毎日がいつも繰り広げられているこの街に今、二人はいる。だがしかし、二人は「恋人」ではなく「親友」である。

 

 そう、「親友」でしかない。例えばついていったのがもし日葵であったのならば。悠宇とうまく歩調を合わせ、二人で望みを擦り合わせる事も出来たであろう。しかし、凜音は違う。日葵ほどに深くつながっている訳じゃない。だからこそ、肝心な悠宇の心が掴めずすれ違ってしまうのである。

 

凜音は二人きりで「親友」としての思い出を作りたいだけなのに。自分を見てほしいだけなのに。悠宇は自分の前に示された成長の可能性に目を取られてばかり。結局自分を見てくれない。

 

そんな彼の元に元アイドルグループのリーダーであり現アクセ職人である天馬との出会いが訪れ。意気投合し、彼は初めての個展への出店と言うチャンスを掴み取る。

 

 無論、それが面白い凜音である訳もなく。大げんかの先にお互いに突き付けた一つの賭け。勝負となる個展の場で、売れないと言う焦燥感に駆られた悠宇は「師匠」と呼ばれた謎の男性の不器用な助言により視野を広げ、新たな一歩を踏み出し。その姿が、凜音の心にまるで棘のように突き刺さる。

 

彼が結果だけを見つめている理由がわからない、何故そこまで喜べるのかが分からない。親友として思いを重ねていたはずなのに、否応なく見ている所が違うと突き付けられる。逃れようのない事実に初恋が音を立てて軋みだす。

 

「―――でも、わたしたち親友だよね?」

 

 嗚呼、神と言うものがもし実在するのならば、何故こんなにも彼女に試練を課すのだろう。まるで悪辣なる一手を指すかのように、こんなにも追い込んでくるのだろう。気付いてしまったのならばもう戻れない。ここから新たな戦いが始まることはもう明白である。

 

一度軋んでしまった歯車は戻せない、ならば被害を最小限に食い止められるのか。

 

次巻、刮目した方が良いのかもしれない。

 

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