読書感想:男女の友情は成立する?(いや、しないっ!!) Flag 5. じゃあ、まだ30になってないけどアタシにしとこ?

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:男女の友情は成立する?(いや、しないっ!!) Flag 4. でも、わたしたち親友だよね?〈下〉 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で悠宇と凛音の間の関係は何処か歪み、軋んでしまった、というのは画面の前の読者の皆様もご存じであろう。では悠宇の共犯者であり戦友でもある日葵は果たして無事で済むのか、何事もなく彼との関係を深められるのか、と聞くと画面の前の読者の皆様はどう思われるだろうか。結論から言ってしまえばそんなことは無い。寧ろ日葵との間にもすれ違いを生じさせていくのが今巻であり、新章開幕なのに更に試練を課していくのが今巻なのである。

 

 

東京で新たな目標と、クリエイターとしての現在の位置を知り。新たな夢に燃える悠宇。しかし彼には目下、一つ悩みがあった。それは凛音との間にある秘密の逢瀬、そして約束。日葵には決して言えぬ嘘と思い。それが彼の心を苛んでいた。

 

「区切りをつけるってのは大事なことなのよ」

 

彼の流されやすさと考えなし、そしていつか選ばなければいけない未来を咲は指摘し。凛音のことを考えた決断をしろと、どこか釘を刺してくるように指摘してくる。

 

「じゃあ、まだ30になってないけどアタシにしとこ?」

 

「わたし、ゆーくんのこと諦めるから」

 

 何処か揶揄う様に、関係を深める様にこっそりと告げてくる日葵。悠宇のことを諦めると嘯き、せいせいしたと言わんばかりの態度を取ってくる凛音。二人の間で振り回され、一枚の写真が波乱を招き悠宇と日葵の間で歯車がきしみだす中。やってくるのは学園祭の季節。・・・だがそれは、新たな試練の始まりに過ぎなかった。過去の騒動の中で「出資者」となった真木島が、出資者の権限を活かし、学園祭について三つの条件を出してきたのである。

 

それは三人で行動し、学園祭は凛音をモデルとして活動し重視すると言うもの。更には学校側から出店の条件として、材料費を今までの約十分の一にしろ、という無理難題を強いられてしまう。

 

「じゃあ、悠宇は何のために夢を追うの?」

 

 思い悩む悠宇を見つめ、真っ直ぐに告げてくる日葵。だがそれは今の悠宇にとっては、惑わす言葉。自分が自分で成っていくような感覚を悠宇が襲う中、日葵もまた自分が彼の事を好きである理由、彼の情熱を自分へと向けたいと言う恋としては当たり前の本心を目の当たりにする。

 

それこそは共犯者としては失格の感情。だが恋する女の子としては当たり前の感情。二心の合間、日葵も思い悩んでいく。共犯者と恋人の間で、歯車がきしんでいく。

 

何ともまあ試練が続き、致命的かもしれぬズレが大きくなっていく今巻。果たしてそのズレは、どうなっていくのか。

 

次巻、そこが正念場なのかもしれない。

 

男女の友情は成立する?(いや、しないっ!!) Flag 5. じゃあ、まだ30になってないけどアタシにしとこ? (電撃文庫) | 七菜 なな, Parum |本 | 通販 | Amazon