読書感想:絶対にデレてはいけないツンデレ

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。ツンデレとはデレるからこそ魅力的であると思われるが、もし絶対にデレないツンデレというヒロインがいたらどう思われるだろうか。もしその絶対零度とも言えるツンデレに何か理由があるとしたら、貴方はどう思われるであろうか。

 

 

普通の高校一年生である少年、史吹。彼は過去に背負ったとあるトラウマから、周囲の顔色を観察し、いつも本音を隠しながら生活している少年であった。

 

「勘違いしないでよね。私、あなたみたいな人、全然好きじゃないんだから!」

 

そんな中、彼は級友である一人の少女とひょんな事から関りを持つ事となる。彼女の名は水悠(表紙)。刺々した言動で周囲を寄せ付けない、絶対にデレない美少女である。

 

誰にも刺々しく排他的で。だからこそ何も考えず、顔色をうかがう必要もなく。史吹は少しずつ、水悠と関わる機会が増えていく。

 

そんな中、文化祭を前に二人は魔女について書かれた、誰かが過去に記した日記を見つけ、持ち主を探す為に、それを劇として、アレンジを加えた上で上映する事を思いつく。

 

そしてここからがこの作品の始まりである。ここから全ての歯車は、確かに音を立てて回り始めるのである。

 

皆で劇の練習に励む中、己の心と言動の乖離に心の均衡を崩し、逃げてしまう史吹。

 

「・・・・・・あなたは、馬鹿だわ」

 

そんな彼を水悠は受け止め、ののしりながらも優しく、まるで傷を和らげるかのように包み込む。

 

「・・・・・・どうして皆、誰も、私の言うこと聞いてくれないの。どうして、私を見てくれないの!」

 

本番も迫る最中、クラスの団結は水面下で乱れ、女王であったはずの少女は苦しむ内面を晒し、二人の絆を裂こうとするかのように蠢動し。

 

「好きなものを好きだって言って、何が悪い!」

 

本番の最中、女王の策が成った時、水悠を救う為に史吹は自分のキャラを脱ぎ捨て叫ぶ。好きなものを好きだという事は間違いじゃない、と。まるで彼女に、そして世界に示すかのように。

 

「・・・・・・今まで、言えなくてごめんなさい。これからは、いっぱい、いっぱい、伝えるね」

 

「ずっと、ずっと・・・・・・あなたに、伝えたかったの」

 

その熱き叫びは状況を切り開く一手となり、その先に水悠に反転の呪いを懸けた魔女との対峙と救済を経て、新たな形でクラスを纏め。その先はもう、語る必要もないだろう。

 

だって、二人はもう既に互いに恋に落ちていたのだから。もう何も、二人を阻む呪いも壁も無いのだから。

 

だから語るまでもない。最後に待っているのは万感のハッピーエンド、これで決まりである。

 

傷と呪いを抱え出会い、互いに埋め合うかのように惹かれ合う、まるで運命のように。だからきっと、二人一緒ならもう大丈夫。

 

熱く、温かいラブコメが好きな読者様。感動してみたい読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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