読書感想:シュレディンガーの猫探し (2)

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前巻感想はこちら↓

読書感想:シュレディンガーの猫探し - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

さて、事件を解決するのではなく迷宮入りにすると言う、探偵にとってのアンチテーゼである魔女、焔螺。彼女と助手である我等が主人公、令和が解決する事件は大規模なものが良いのだろうか。そう聞かれたのならば、それは否であると貴方は答えるだろうか。私はもしそう聞かれたのならばそうであると言いたい。

 

大規模な事件、例えば人の死が関わってくるかのような事件は彼女の手には余る。無論そんな事件は迷宮入りさせてはいけない。だからこそ、魔女とその使い魔が扱う事件は日常の延長線上にある事件であるべきである。

 

令和の妹である弥生を襲う不可思議な現象、やよいトリップ。その現象をどうすべきかと迷う令和の元へ、新たな事件が持ち込まれる。

 

その事件とは言うなれば窃盗事件。その犯人の名は「東高五十面相」。怪盗のようにふざけた犯人から届けられたあまりにも簡単に過ぎる予告状から始まる事件。

 

しかし、令和には無視できぬ理由があった。何故ならその事件は、過去に死した令和の姉、飛鳥が起こした事件を模倣するものであったからである。

 

 

かつてあった事件を模倣するかのように今、再び巻き起こる謎の犯人による事件。その事件を解決する事が弥生の為になると信じ奔走する令和。いつも通りに迷宮入りにしようとする焔螺。

 

では、この事件の真相は一体どんなものであるのか。かつてをなぞるように今また巻き起こる事件の真実、それはどんなものなのか。

 

その答えをこの記事の中、語ってしまうのはきっと野暮というものであろう。だからこそ、敢えて私は多くを語らず、ただ読んでほしいとだけ言いたい。推理ものの真相は、やはり自分の目で確かめてこそというものであろうと信じている。

 

「うん・・・・・・。多分、全てが」

 

ただ、今巻の事件の犯人は一人ではない。隠されたもう一人が意外な所にいる。

 

だが、犯人たちの動機は伝えたい思い、「誰か」に対する思いがあったから、という理由なのだ。だとすれば、犯人の動機には同情できるのか、そうではないのか。

 

「今回のミステリーもこれにて―――迷宮入りだ」

 

再び迷宮の中へと封じ込められたその事件、だけど迷宮入りしたからこそ救われた想いがあると信じて。

 

前巻を楽しまれた読者様、ちょっと切なくて不思議なミステリーが好きな読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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