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読書感想:シュレディンガーの猫探し (2) - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、今巻の感想を書いていく前に、残念なお知らせを一つ、しておかなければならない。それはこの作品がここで完結、打ち切りという形である事。故、この巻においても結局語られぬ事は存在し、読者の想像に任せ補完するべき部分も多々存在する。それだけは是非、画面の前の読者の皆様は今巻の感想を読む前にご承知いただきたい。
さて、あくまでも魔女は神秘を求めるもの。謎の正体なんて関係ない、そこにある神秘を求め、神秘を愛するが故に時に真実をひた隠すもの。という事実は、画面の前の読者の皆様の中でここまで読んでこられてきた方はもうご存じであろう。
そんな魔女である焔螺と助手である令和が求めるもの。令和の姉である飛鳥が遺した本、「シュレディンガーの猫探し」。その手掛かりを求め、今巻で出向く事になるのが芥川の故郷である閉鎖的な田舎の村、猫又村である。
田舎特有の他者への排斥感、何処となく息苦しい閉塞感。どこかよそよそしい空気の中、令和達はこの村の巫女であり「探偵」と名乗る少女、カンナと彼女の兄であり村の重鎮の跡取り、キョウヤと出会う。
妖狐様の住まう神殿の一角には近づいてはいけない。水神様の川で遊ぶと河童に引き込まれる。赤き月夜に外に出てはいけない。
村に広がっている数々の子供への注意の意味も含めた妖怪伝承。焔螺達が謎への探究を始めた途端に巻き起こる怪現象。そこに秘められた真実、それは一体何なのか。
それを語るのは致命的なネタバレとなってしまうので、語る事は出来ない。なので、画面の前の皆様に、少しだけヒントをお伝えしておこう。
「謎とは、真実を隠したいという誰かの『想い』だ。良くも悪くも、人の心が生み出したヴェールなんだ」
この村の秘密、そこに飛鳥が関わっているのは勿論その通り。では彼女も関わり、黒幕は何をしたかったのか。
それは、只一人の為に真実を隠したかったから。その一人とは誰か、何故その為に村を巻き込んだのか。そこに秘められているのは「約束」。そして誰かの、この村の「物語」である。
そうまでして、姉である飛鳥は何を伝えたかったのか。それはこの巻の最後、明らかとなる。令和達弟妹達に伝えたかったのは、只一つの思い。彼等に未来を見据えて歩いてほしいと言う、姉としての優しい思い。
「この世界はどこまでも神秘的だ。果てしなく、無限の可能性が広がっている!」
そして世界に広がるは、観測しただけでは掴む事も出来ない無限の可能性。
その全て、そして人の思いが作り出した謎の迷宮を画面の前の読者の皆様も見届けてほしい。
その果てに何を見るのか。ぜひ見てほしいものである。