読書感想:シャーロック+アカデミー Logic.1 犯罪王の孫、名探偵を論破する

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。皆様は探偵、と聞いてどんな探偵を思い浮かべられるであろうか。名探偵コナン金田一少年の事件簿。現代の探偵と言うとその辺りの存在を思い浮かべられる読者様も多いだろう。シエスタという名前を思い浮かべられる読者様もおられるだろう。では、シャーロックホームズやポワロといった古来の名探偵を思い浮かべられる読者様はどれだけおられるだろうか。今の名探偵たちにも続く、古来の名探偵。そんな存在達もまた、今の世の中で輝いているのである。

 

 

ではこの作品はどんな存在なのか。この作品は、名探偵を育成すると言う学校で始まる。名探偵を育成すると言う舞台であるが故に事件が日常と隣り合わせな世界で、探偵未満の少年と名探偵の孫の少女が出会い始まるのだ。

 

1999年、世紀末。東大最高の名探偵と稀代の犯罪演出家の知略戦争は日本で決着を迎えるも、演出家の犯罪芸術はネットを通して受け継がれ、世界中に数知れぬ後継者とおびただしい数の迷宮入り事件を生み出して。これに対応するため、名探偵は国連と連携し、一つの組織を設立し。二千年以降は、探偵と犯罪の終わりなき戦いの歴史となっていた。

 

「魂を賭けてもいい。これが―――真実だ」

 

四半世紀の後、国際的な探偵を育成する「真理峰探偵学園」で二人の人物が邂逅する。片方の名はエヴリール(表紙右)。稀代の名探偵の養女。もう片方の名は、未咲(表紙左)。「犯罪王」が祖父である孫。入学式の早々で起きた模擬事件、それの謎をエヴリールが先に解くも、遅れて来た未咲は何故か彼女よりも高い得点を記録し。それに納得できぬエヴリールとの間に推理による決闘が巻き起こる。

 

だが、大半の予想に反し決闘はエヴリールの敗北に終わる。それは何故か。何故ならば未咲だけが気付いていた、そもそも問題が違うと言う事を。回答の違いはただそれだけ。

 

 

そこで二人の因縁は終わる、かと思われた。しかし最初に支給されるポイントにより振り分けられる寮にて二人は再会し。日常生活も、学校生活も共にする事となり。デリカシーがなかったり問題もあるけれど、犯罪王の孫と言うフィルターが外れ、未咲という個人を見ていく事で。少しずつ誤解も解けて、距離も近づいていく。

 

だがここで忘れてはいけない。名探偵ある所に事件あり、そして卵とは言え探偵が数多集うこの学園で事件が発生しないわけがない、という事を。プールにて発生する殺人事件、エヴリールは早速推理に挑むも、導き出したのは犯人が身近にいると言う事。その推理を高らかにぶつけるが、その推理は軽々と論破され、自分の至らなさを突き付けられる。

 

「―――そろそろ目は覚めたか、お姫様」

 

だが、そこに犯罪的に介入し、反論の矢を突き付ける者がいる、それこそは未咲。

 

 

「―――探偵にキスは不要ですよ、王子様」

 

 

その手荒い推理と言う激励で、エヴリールは立ち上がり。二人の未熟、立場が真逆の二人が協力して真の犯人に推理を突き付けるのだ。

 

推理と言う物に真っ直ぐに向き合い、骨太に描き出して。更にはわかりやすく噛み砕いているからこそ、推理ものとして推理も出来る。そんな正に、探偵ミステリものとして新スタンダード、となり得るかもしれないこの作品。探偵ものが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: シャーロック+アカデミー Logic.1 犯罪王の孫、名探偵を論破する (MF文庫J) : 紙城 境介, しらび: 本