読書感想:勇者は論理で死に絶える

 

 さて、論理というのは推理にとって重要なものであろう。それは何故か、というと推理と言うのは論理に支えられているものだから、と言える。例えば、推理をすっ飛ばしていきなり犯人を指摘したとしよう。推理をした者からすればその推理は正しいものかもしれないし、実際その推理は間違っていないかもしれない。だがそれでは納得を得られない、誰からも。だからこそ、論理を用いて推理をし、犯人を解き明かすというのが重要なのであると言える。

 

 

さて、ではこの作品のタイトルにもなっている「論理」、というのは果たして本当に「論理」なのか。画面の前の読者の皆様の中にはこれは「屁理屈」だ、という方もおられるかもしれない。それもまた一つの捉え方であろう。私から言えるのは只一つ、この作品は作者であられる零真似先生のワールド、空気感が全開という事だ。

 

違法薬物、「異世界転移」。服用した者に強い幻覚作用を引き起こし、精神を異世界に転移させるドラッグ。異世界に転移し、魔王を殺し勇者となって、異能力を手に入れ帰還し。現実は非情、世界は排除の道を選び、「論理」によって勇者の異能力を解き明かし殺せる探偵を擁立、排除の道を選ぶ。

 

「キミは、生きていていいんだよ。一愚」

 

そんな「勇者」の一人、六歳の頃に「異世界転移」を飲まされ「虚構破り」という嘘を解き明かす異能力を得た少年、一愚(表紙左)。ある日、学校からの帰り道、遭遇したのは探偵である、リボルバークイーン(表紙右)による勇者排除の現場。一愚も抵抗しようとするも容赦なく解き明かされ、諦めて死を選ぼうとしたところ、現れたのは名探偵である希(表紙上)。彼女の「問題を解きほぐす推理」により、状況は丸め込まれ命は助かり。希は、リボルバークイーンの正体もまた勇者であるが故、死ぬべき理由の片方を無くすために探偵になりなよ、と言い。 解き明かし殺すのではなく、丸め込んで迷宮入りにして全部を救う、誰も殺さぬ名探偵という道を示し。その道に魅力を感じ、まだ生きていても、と思い一愚は探偵となる事を目指すように。

 

「僕は、誰も殺さない名探偵になるんだ」

 

その道は過酷に過ぎる。そも、運に見放された彼の道は茨の道。まず入学試験から罠に嵌められやり込められそうになり、更には断りを外れた者達との戦いまで。そんな中、キラリという同級生の勇者が妹分になったり、リボルバークイーンこと萌と激突したり。そんな中、一愚は愚直に自分らしく目指していく、誰も殺さぬ道を。勇者ではなく、まるで悪魔のような狡知を以てして。

 

正しく零真似先生ワールド全開であるこの作品。独特の世界観に酔いたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

 

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