読書感想:現実でラブコメできないとだれが決めた?

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さて突然ではあるが、この世界は案外くそったれなのかもしれない。人は生まれる場所を選べず、故に生まれてから築ける関係性なんぞ言わばガチャ次第である。持っている者は持っていて、持っていない者は持っていない。それこそこの世界であるのかもしれない。

 

画面の前の読者の皆様、唐突な妙な語りを失礼いたしました。では、画面の前の読者の皆様にお聞きしたい。貴方はラブコメの世界、または主人公に憧れたことはあるであろうか。彼のようになりたい、彼の周りにいるような友人やヒロインが欲しいと思われたことはあるだろうか。

 

しかし、哀しいかな現実はどこまで行っても非情である。夢すらない。

 

周りに幼馴染がいるかなんて稀だし、増してや恋に落ちるなんてわからない。おまけに美人な級友や委員長やら、義妹なんていたりするわけもない。

 

そんな夢のないこの現実世界で、実際にラブコメを作り出そうとしているのがこの作品の主人公、耕平(表紙右)である。

 

ブコメがしたい。だが待っているだけじゃこの灰色の現実は変わりはしない。ならばどうすれば良いのか? そうなら一から作ってしまえばいいのである。現実で、ラブコメを。

 

ではそんな荒唐無稽な策を、共犯者として巻き込んだ現実派な少女、彩乃(表紙中央)と共にどう成し遂げていくのか?

 

それは荒唐無稽な策に非ず。現実的な調査と計画に基づいた、かなり現実味を持った作戦である。

 

まずはLINEやyoutubetwitterといったSNSを活用して分析し、仮定の調査結果を出し。

 

それに基づき、実際に調査をし情報を集めて修正し、実現へと近づけていく。

 

その根底にあるのは、どんな理屈か。

 

すでに充実した毎日を勝ち取っているはずのリア充でさえ、主役を張れるのは何故か?

 

「自分自身を貫くこと」

 

そう、そういう事なのである。画面の前の読者の皆様、貴方も誰かラブコメの主人公を思い浮かべてみてほしい。彼等は皆、自分を貫いてはいなかっただろうか。大切な譲れぬ一線を貫き、行動に芯を伴っていなかっただろうか。

 

それが出来るのならば、誰もが主人公になれる筈。

 

「こんな現実は、認めない」

 

それが出来るのならば、例え困難な状況にぶつかってもなにくそと乗り越えていけるはずなのだ。

 

ブコメを一から創り出す。物語が始まるのを待つのではなく、自分から創り出し誰かを巻き込んでいく。

 

画面の前の読者の皆様、貴方は彼を愚かと笑うか? それとも最高だと親指を立てて歓迎するか?

 

ブコメを一から創り出す、それは誰も見た事が無い新境地。そしてそれを行うは自らを大馬鹿な主人公と定義した、一人の挑戦者。

 

ここにあるのは間違いなくまだ誰も見た事が無い作品だ。そして、今一番のクリエイティブを貫いているかもしれない作品だ。

 

だからこそ、まだ見たことのない物語を読んでみたい読者様は是非読んでみてほしい。新人賞だからこその、誰も知らない物語に出会える筈である。

 

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