読書感想:ワイの本当の職業が【性騎士】とか言えない1

 

 武豊武豊。同じ二つの漢字を並べたように見えて、前者はたけとよ、愛知県の街の名前であり、後者はたけゆたか、競馬界のレジェンドの名前と読める訳であるが。まぁ何が言いたいのか、というと日本語は難しいという事である。音にすれば一つ意味を持っているとしても、それを漢字にしてしまうと、別の意味を持つ感じをあてはめれば、別の意味を持ってしまうかもしれない。この作品はそんな、勘違いから始まる割とすちゃらかな英雄譚なのだ。

 

 

異世界の国、その片田舎の平凡?な村。老人しかいないこの村に生まれ育った少年、アルス(表紙左下)。自称ちょっとだけ顔の良い男、その内心は煩悩と雑念塗れな、ごく普通の思春期男子。

 

「なんだよ性騎士ってェ!!」

 

彼が迎えた十五歳、神からの「職業」授与の儀式。そこで授けられたのは「性騎士」という、性欲を消費してスキルを発揮する、というよく分からぬ淫猥なもの。だが思わず叫んだところを聖なる方、「聖騎士」と勘違いされてしまい。スキルの偽装は死罪、という事で最早訂正も出来ず、お祝いをされる事に。

 

聖騎士、それは数百年現れなかった職業。それを求められるのは都、世界に二人といない「聖女」、ルナ(表紙左上)の護衛として。

 

「あぁ・・・・・・世界は美しいっ! こんな争い事はやめて世界平和の話でもしませんか?」

 

迎えに来た「黒騎士」、メイ(表紙右)と共に進む中、聖騎士であるかを確かめる為にメイに腕試しを挑まれ。死の危機もある中、無我夢中でスキルを使い、性欲を使用後は謎の人格が出て来たり。 一先ず秘密はバレずに済む中、遂にたどり着いたのは都。

 

「未だかつて聞いたことない最悪の選択肢」

 

猫耳さえ着けてなければ純粋にお前のこと尊敬できたのにっッ!」

 

さて、一体何が巻き起こるのかというと。どったんばったんな大騒ぎである。男を危険視する「白騎士」、先代の護衛であるリースに攫われて去勢されかけたり。ルナを誘拐しようとする少年を諫めたら、最後はしっくり決まらなかったり。

 

「聖騎士、聖女なんて言われよーがただの人間だろうが」

 

そんな中、聖騎士らしくない、高潔とは全く違うけれど、人間臭くて真っ直ぐなアルスの生き方は、少しずつルナやメイ、リース達を惹きつけていく。気が付けば、いつの間にか仲良くなっていく。

 

「私の―――性癖のためです」

 

『―――そいつは信用できるな』

 

その最中、巻き起こるのはルナを狙う、他国の暗殺者による襲撃。瀕死に陥るアルスを救うのは、職業の先に居る何者か。性癖の為、というこの世で一番信用できる名目で一致し、限界を超えて戦い、勝利を掴むのである。

 

正にすちゃらか英雄譚、どこか締まらぬ、だけどくすりと笑える大活躍が光るこの作品。軽く読める面白さを見てみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

ワイの本当の職業が【性騎士】とか言えない 1 (オーバーラップ文庫) | 恋狸, むつみまさと |本 | 通販 | Amazon