読書感想:人生二周目の鏑木先輩



 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様は、人生やり直したい、と思った事はあられるであろうか。私は正直何度もある。今の友人を失う、のは残念ではあるが、もしやり直せたのならもっと器用に生きて見せるし、自分の失敗と言うのは朧気ながら理解はしているので、そこをやり直せれば自分はもっと、いい生き方が出来ていたかもしれない。そう思ってしまう次第である。

 

 

しかしそうは思ってはみても、人生をやり直す、と言う事は出来ない訳である。そもそも逆行、どころか転生という事象も本当にあるかは分からない次第である。だからこそ我々は今、この時間軸で生きていくしかない訳で。

 

「私は鏑木美春。キミの未来のお嫁さんさ!」

 

と、まぁこういう前説から分かっていただけたかと思うが。この作品のヒロイン、高校生でありながらプロの小説家としても活動する文武両道、才色兼備な先輩、美春(表紙)は彼女の通う学校に入学したばかりの少年、友樹の姿を探して。やっと見つけた彼を、自分だけが所属している文芸部へ引っ張り込んできて、いきなりそう告げてくる。

 

「私はね、人生二周目なんだ」

 

ぐいぐい来る彼女に押し切られ、入部届けを書くことになったら何故か婚姻届けも一緒に書くことになり。それは預かられて語られるのは一周目の一端。彼女曰く友樹といた時間が一番充実していたが、一周目では出会うのは遅く、年齢的に子供を諦めることになってしまったらしいという事。

 

すぐには信じられぬも、電話番号を覚えていたという彼女からのメッセージが届き、どこか頭がこんがらがる話を聞かされたり。そんな中、美春はぐいぐいと友樹へと距離を詰めてくる。

 

彼が作ってきたお弁当を食べてみたいとおねだりして、自分が買ってきた高級な弁当と交換してみたり。

 

「友樹くんはこれまで、私の本を読んでくれていなかったんだぁ・・・・・・」

 

本屋で遭遇し、自分の作品を読んでいてくれなかったんだ、と拗ねてみたり。

 

まるで万華鏡のように表情が変わる彼女、その表情の中に時折見える影。二周目、と語るからこそ何処か未来、というものに思う所がある彼女。

 

「運命なんて、私は信じていない」

 

嵐の雨の日、語られるのは彼女の思い。一周目は落ちこぼれだった、だからこそ彼との時間が特別だった。だけど二周目の今、自分の選択のせいで彼との出会いはねじ曲がり、あの日の優しさ溢れる目を向けてくれる機会は失われてしまったのだ、と。

 

「先輩は、悪くありません」

 

その彼女を抱きとめて、真っ直ぐに伝えるのは偽らざる思い。出会いは変わってしまったけれど、変わらぬ優しさはここにある。自分は此処にいる、だから弱さを見せて欲しいと。 まだ先には進まずとも、二人の距離感は少しだけ変わるのである。

 

魅力的な先輩に愛される甘々な展開が見所であるこの作品。ラブコメで悶えたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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