読書感想:俺の幼馴染はメインヒロインらしい。

 

 さて、「タイムリープ」という現象については画面の前の読者の皆様もご存じであろう。例えばファンタジーにおいても、現代を舞台にした作品においても、ラノベにおいては様々なシチュエーションで起こる訳であるが。タイムリープで目指すところ、というのは大体過去のやり直し、というのは最近の作品を読まれている読者様であればご存じであるかもしれない。

 

 

では、そんな「タイムリープ」という要素について割と共通する要素があるのは画面の前の読者の皆様はご存じだろうか? それは基本的にタイムリープするのは主人公であり、過去を変えて救いたいのはヒロインである、という事だ。タイムリープして既に顛末を知っている過去のイベントに介入し、しかし異なる行いが過去を改変し、世界の修正力が絡む事等起きて未知の未来に繋がっていく、というのが王道のパターンである。

 

しかし、この作品はそのような点において一つ、他とは違った点がある。それはタイムリープしているのは主人公、ではなくヒロインである莉里(表紙)であるという事。かつて大切な人と結ばれるも浮気によって破局し傷ついて。その果てにタイムリープしてきた、という事なのだ。

 

「何となくだよ。彩人なら早く来そうだなって。まさか、本当に来るとは思わなかったけど」

 

そして、高校の入学式。新たな生活の始まる日。彼女の隣にいたのは、彩人という少年。この作品の主人公、ではある。しかし本来の歴史、というか一周目の歴史においては主人公ではない、寧ろモブである。二周目では本来の主人公の傍におらず、しかしトラウマを解決するためにあえて過去と同じルートを辿る彼女。その傍に、二周目の人生で幼馴染として一緒にいるのが彼なのだ。

 

「・・・・・・そんなに否定しなくても。彩人と一緒にいる時だけ、凄いキラキラしてるから丸わかりだよ?」

 

 

そして、この彩人という主人公は正に、彼女にとっては本当の意味での白馬の王子様的な存在であった。幼馴染として気の置けない存在でありながら、男嫌いと言う事にしている彼女の傍に居てくれて。そしてまるで、彼女を守る騎士の様に。一周目の人生で発生したトラウマが発生しようとした途端、そのイベントに繋がるフラグをへし折って。気が付かぬ間に彼女の心を救っていく。

 

「だけど、誰かさんに染められたせいで、ちょっとだけ違うかもね」

 

まるで彼の色に染まっていくよう、それは確かに一周目とは違う色。その色が彼女自身の力になる。一周目の、本来の主人公のちょっぴり歪んだ願いを自分で叩き捨てる程に。確かに違う変化を刻んで見せるのである。

 

「私が彩人を置いて行くなんてあり得ないよ」

 

パワフルなヒロインの心情が鮮烈に描かれている事で、普通とは違うラブコメの面白さを出しているこの作品。一風変わったラブコメを読んでみたい読者様は是非。

 

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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