読書感想:悪役ムーブで青春リスタート! 悲劇のヒロインを金と権力で救い出す

 

 さて、時に有名なゲーム原作のコンテンツ、fateシリーズにはAUOこと、ギルガメッシュというキャラクターが存在しているのだが。言動的には傲慢、正に暴君的なタイプであるがその王としての在り方、臣下へ下す王としての優しさに惹かれたという方もおられるかもしれない。つまり、悪役であっても魅力的な悪、というのは言うのである。

 

 

と言う訳でこの作品は、不遇な死を迎えた少年、飛一(表紙右)が高校入学の自分に巻き戻り。自分にとっての唯一の心残り、灰璃(表紙左)を救い、幸せにするために再び悪としての道を往く物語である。

 

世界的にも有名なグループ次男、兄は大人気アイドルグループの一員。しかし飛一は兄にも父にも似ていなくて、それがコンプレックスで。どれだけ頑張ろうと兄のように見てもらえず、いつしか悪役のようにふるまう様になり高校二年生。彼が取り違え子であったと判明、本物の息子が帰ってきて追放されて約十年、見知らぬ女性を庇い事故に遭い、灰璃を救えなかった、という後悔と共に死を迎える。

 

「・・・・・・懐かしいな」

 

しかし次の瞬間、何故か彼は入学式の日に舞い戻っていた。その片目が金色になっている、という事を除けばあの日の身体で。

 

「この俺が許してやる。その布切れを使うことをな」

 

入学式、再びの灰璃との出会い。だが彼女は、金バッジという特別なアイテムを持つ生徒とそうではない生徒が差別されるこの学園で、両親の死後引き取られた叔母の家で冷遇される、持たざる身。関わらぬ、と最初は決めていた。だが見逃せなかった。だからこそ彼は、灰璃を守り抜く事を二度目の人生の命題と決め。悪役らしく振る舞いつつ、時には傲慢、持つ者ゆえの不器用な優しさを見せつつ。バスケ部の問題などの一周目では関わらなかった問題に関わりつつ。望まぬ縁談を押し付けられようとしていた灰璃を己の家のメイドとして引き取り。決して己の懐には入れずとも守ろうとする。

 

「たとえ間違ったことがあったとしても、全部が無駄なんてことないよ」

 

その悪としての行いは、憎悪を生み、敵意を生む。だが一周目とは違い、僅かながらに理解者である仲間を作るなどの変化を生んでいく。それは確かに、飛一の力となる。

 

「じゃあ、いっそこの家を乗っ取っちゃえば?」

 

その果てに飛一は選んで望む、灰璃にどこまでもついてこい、と。共に地獄へ落ちようとも後悔しないという灰璃は、未来を知っているからこそ追放の未来を諦めている飛一に言う。じゃあ父親、超えちゃえばいいじゃん?と。それは今まで考えもつかなかった選択肢、外にいる者だからこその考え。その答えに飛一の心の雨は晴れ。二周目の人生の大目標も決まるのだ。

 

真っ直ぐながらに芯を通し、一種の美学を持つ悪役だからこその爽快感があるこの作品。爽快感のある物語を見てみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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