読書感想:灰原くんの強くて青春ニューゲーム2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:灰原くんの強くて青春ニューゲーム1 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様は「タイムリープ」ものでありがちな事、と聞いて何を連想されるであろうか。ヒントはこの作品も迎える事態である。少し考え・・・る事もないだろう。答えを言ってしまえば「世界の変容」である。当たり前である。一周目で取らなかった選択肢を取れば二周目が変化しない訳もない。そしてこの作品の主人公である夏希のように、一周目とは違う人間関係の中にいるのなら。どう足掻いても人間関係の変化は避けられぬのである。

 

 

そして夏希は別に、無敵と言う訳ではない。タイムリープにあたり特別なスキルを得ている訳でもないし、内面は特に変化もしていない。

 

 だからこそ、思い悩む。悩みもするし、揺れもする。それは等身大、当然の感情。だからこそ一途でいる筈なのに。心は戸惑い揺れ動くのである。

 

梅雨の季節が迫る中、美織の手助けにより憧れの相手である陽花里と接近する為に、何気ない話題から距離を詰めようと頑張り。同時に皆で映画を見に行くことになり美織と怜太、詩の合計四人でダブルデートのような形で出かけたりして。

 

 一周目の人生では得られなかった、正に虹色の青春。カーストトップの仲間達と過ごす賑やかな日々。そんな日々に突然立ち込める暗雲の影。詩と美織が所属するバスケ部に今、溢れる確執を目撃し。触れ得ぬ空気を感じながらも、幼馴染も仲間も放っておけぬと夏希は乗り出し。仲間と一緒に、解決へと乗り出していく。

 

「だけど俺も、できる限りのことはするよ」

 

「俺の前では、強がらなくたっていいんだ」

 

自分は当事者ではない、それでも何かできる事はある筈だと。信じて仲間達の間をつなぎ、詩と美織にそれぞれ寄り添い。再び中心で、一生懸命に皆の心を繋ごうとする夏希。

 

「ナツのこと、絶対に振り向かせてみせるから」

 

―――だからなのだろうか。押し殺そうとした気持ちは殺せずに、それどころか大きくなって溢れ出す。分かってはいる事もある、それでも譲れないこの思い。その思いに導かれるままに、二人きりで向かった七夕祭りの場、詩は夏希に甘い宣戦布告を叩きつける。

 

「―――美織は、僕が貰ってもいいんだよね?」

 

その場を目撃し、心に靄が立ち込める美織。そんな彼女を見つめ、動き出そうとする怜太。

 

それもまた、夏希の二周目が生み出してしまった結果。恋心はまさにスクランブル、彼を中心に全てが動き、軋みだす。

 

ヒロイン達の間で揺れ動く、思いがそれぞれに向いていく。思春期の等身大が無敵の余裕をはぎ取り、ラブコメの舞台に立たせていく今巻。恋心は混沌、故に面白くなるのだ。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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