読書感想:声優ラジオのウラオモテ #09 夕陽とやすみは楽しみたい?

 

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読書感想:声優ラジオのウラオモテ #08 夕陽とやすみは負けられない? - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前回夕陽こと千佳と、やすみこと由美子の先輩への挑戦は無事に終わった訳であるが。彼女たち二人は声優と言う世界で彼女達だけの青春の時間を消費しているというのはこのシリーズを嗜まれている読者様であればご存じであろう。彼女達にも普通の、それこそ当たり前の青春を過ごしているという可能性もあったかもしれない、しかしそれは彼女達の仕事の都合上あり得ない。

 

 

 

が、しかし。まだ忘れてはいけない、彼女達は未だ高校生、高校と言うルール内の枠組みに囚われていると言う事を。その辺りが影響となってくるのが今巻なのである。

 

「このままでは、非常にまずいです」

 

受験生にとっては重要とも言える三者面談、そこで由美子に告げられたのはこのままではまずいと言う事。まぁ仕事が忙しかったから、と言う言い訳は立つがそれで結果が変わることはなく。奇遇にも今期、声のお仕事は入っていないという事で由美子は仕事をセーブし、受験勉強に励む事となる。

 

「こんなことしてていいのかな~? って思うんだよ」

 

折しも学校では文化祭の季節を迎えており。普通の女子高生として皆で準備に励んだり、友人が所属する演劇同好会の劇を手伝う事を快諾したり。 今まで経験した事もない当たり前の青春を過ごす中。ふと思い浮かぶのは、このままでいいのか、こんなことをしてていいのか、という疑問。

 

そのもやもやが千佳からその足を遠ざけて。だが、彼女が声優の世界から離れている間、声優の世界は彼女の事なんか知った事かと進んでいく。自分がオーディションを受けた作品が新人声優に取られ、千佳は更に躍進していって。黒い思いが芽生える中、その思いを千佳はどこ吹く風と受け止めて。少しだけスッキリした彼女は、得たお手本の声を胸に再び舞台へ向けて準備を始める。

 

が、しかし。学園祭当日、舞台本番にとびっきりの波乱が待っている。演劇におけるヒロインを務める少女の体調不良によるダウン。由美子の友人の手により千佳が連れてこられて巻き込まれ、彼女が自分の信念を曲げて協力してくれた事で。舞台の幕が上がる。

 

そこに待っているのは、面白いと言う事。千佳により自身の演じる役柄の新たなキャラクターが生み出され、それが劇を更に高めていって。

 

「あたしが、やりたいんだ」

 

その果てに見つけ出した、己の本当の思い。普通の幸せを体験してみて、それでも苦しい声優の道を選んで。大学に進む、その理由を。

 

声優にとってのお休みと言える期間を絡めて、ちょっと違った日常を描く今巻。シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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