読書感想:有名VTuberの兄だけど、何故か俺が有名になっていた #1 妹が配信を切り忘れた

 

 さて、画面の前の読者の皆様のなかには、今度アニメ化される「ぶいでん」、こと「Vtuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた」という作品をご存じの方も多いであろう。あちらの作品は配信を切り忘れ、ストゼロ大好きな酒カスお姉さんの素顔がバレ、という所から始まった訳であるが。ふと思うと最近、Vtuberものは増え始めてきている訳であるが、何処かで事故が起こったり、事故から始まったりという作品が多かったりしないだろうか。

 

 

 

と、まぁそれは私の勝手な思い込みなのかもしれないが。この作品もまた、配信事故から始まる作品である、というのはご理解いただきたい。

 

ごく普通、というのかは知らぬが父子家庭であり、喫茶店を経営する個性的な父親に育てられた少年、聡太。夏休みを控えたある日、彼は付き合っていた級友のギャル、クスミにお試しで付き合っていただけ、と切り捨てられてフラれてしまい。傷心を抱えながら、一先ず家族の前では笑顔で在ろうと、日課である義妹、いすず(表紙)のお世話に戻る。

 

「あんな、クソガキみたいなキャラ作って、見てる人にひどいこと言うの、やめた方がいいと思うぞ」

 

北欧系ハーフの彼女は引きこもり、しかしその裏の顔は小悪魔メスガキ系大人気配信者、「いすずワイン」。そして本性は超ブラコンなぽんこつ甘えん坊。そんな彼女にお金を稼いでくれることに感謝しつつ、しかしそのキャラはどうか、と善意と優しさから提言し。この一連の流れが配信切り忘れにより、全世界に露呈してしまう。

 

 

しかし、世間の反応は冷ややか、どころか温かいものであった。実は複雑で苦しい家計である、という秘密に同情が集まり。更には優しく温かい兄である聡太に、視聴者からは感動の声と共に注目が集まり。気が付いたらトレンドを掻っ攫い、妹を通しての打診を受け。聡太は「ワインの兄」という名前で、兄系Vtuberとしてデビューする事となる。

 

 

「おまえらうるさいよ!」

 

 

聡太の配信、どころかデビューは未だ。それでも、事務所で四天王と言われる大人気Vtuberアルクとオフコラボしてみたり。いすずと兄妹配信してみたり。その全てで何故か事故を引き起こしたりして、決めようと頑張っても結局決めきれなくて。でもそんな彼の行いが、逆に人気となっていって。いつの間にか彼は、Vtuberとして世間に受け入れられていく。

 

「俺は家族のために何かをするのが好きなんだ」

 

そんな日々の中、彼はこの、Vtuberというものそのものを好きになっていく。いつの間にか夢中になっていく。手段ではなく、それ以上のものとして好きになっていくのだ。

 

家族もののハートフルな温かさと、何かやっちゃいましたか系の面白さがあるこの作品。ほっこりと笑いたい方は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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