読書感想:幼馴染のVTuber配信に出たら超神回で人生変わった

 

 さて、最近はVtuberものというジャンルも一つの人権を得てきていて、ジャンルにおけるテンプレというのも定まりつつあると思われるが、Vtuberものが苦手、嫌いという読者様もおられるかもしれない。無論、ラノベの好き嫌いというのは個人の主観によるものであるので、嫌いというのであればそれもまたよい、とは私は思う。では苦手、嫌いという理由として「成り上がりが早すぎる」という読者様もおられるだろうか。

 

 

そんな理由もあるのなら、私も分かる。Vtuberものというのは大抵素人から始まる訳だが、登録者数の増加のインフレが凄く、一巻の終わりに登録者百万人以上、というパターンもある事がある。しかし現実はそう上手くはいかぬ、そんなすぐに増える訳もない、と思われているから苦手、という方もおられるかもしれぬ。しかしこの作品はその辺りが苦手な方も安心できる内容かもしれぬ。何故かと言うと、この作品の成り上がりは割と現実的な範囲であり、主軸は幼馴染みとのラブコメであるので。

 

「やっぱり持つべきものは幼馴染だねー!」

 

「はいはい」

 

大学にはいかず、フリーター生活をしていた青年、類(表紙左)。唯一の得意な事はゲーム各種、そんなある日、最近疎遠だった幼馴染、彩花(表紙右)に遊びに誘われ。彼女の家に行ってみれば、実は彼女がVtuberであり類の事を散々視聴者に語ってしまったと言われて。やむを得ず、一回だけという条件を設けて彼女のチャンネルでゲーム配信をする事になって。ゲームの腕をいかんなく発揮したら、彩花、もといV名「レイ」のやられぶりがウケてバズって、神回になり。彩花の事務所からデビューしないか、という声がかかって、類は「ルイ」というキャラクターでデビューする事となる。

 

「うそだろ」

 

さて、ここからどうなるかはVtuberもののテンプレをご存じな方なら大体お分かりであろう。事故、である。最初の雑談配信切り忘れにより日常生活を晒してしまい、だが飾らぬその様子が受け入れられて。いい意味で気安さを以てファンに受け入れられた彼は、ファンにイジられたりしながら、ゲーム配信をしようとしてみたらトッププレイヤーといきなり野良で組むことになったり、恋バナ系コラボ配信に出ることになったり。

 

「まぁー、類は青春がしたいんだもんね?」

 

そんな彼が得る、もとい取り戻していくものがある。それは「青春」。今からでも遅くない、と遅れてきたアオハルを、存分に楽しんでいく。

 

「私、ずっと前から類が好きだよ。もちろん異性として、だよ」

 

そんな彼を見守り、彼と共に楽しむ彩花。久しぶりに幼馴染として過ごす、取り戻していく距離感の中。向けられていくのは彼女がずっと持っていた恋心。その心を受け入れて、二人の関係もまた変わるのである。

 

甘くて時に甘酸っぱい、アオハルがVtuberという舞台の上で繰り広げられるこの作品。全力で楽しむ、そんな行為が好きな方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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