さて、言うまでもないが告白と言うのはラブコメにおいて重要なイベントである、というのは画面の前の読者の皆様もご存じであろう。一つの関係が、成就にせよ失恋にせよ、何らかの形に結実するのは間違いはない。ではそんな告白をもし誤爆してしまったら、という事はありえるのだろうか。 普通であればきっと、あり得ない事であろう。
しかしこの作品においてはそんな告白を誤爆してしまった事で、幕が開ける。中々見ない状況から始まるのである。
頼まれた事を断れない、超がつく程のお人よし。叔父の営む喫茶店に居候している少年、光太郎(表紙左から二人目)。 いつものように時に何かの頼みを引き受けたりしつつ、ある日ふと親友である俊、通称ジロウに気になる人がいる、と話してしまった事で、俊の要らぬ、とも言えぬが早合点のお節介と級友達の気遣いで、あれよあれよという間に告白の場を整えられてしまう。
「え? なんで?」
「え? 何が?」
が、しかし。勇気を出して告白した、しかし相手の事を確認すると言う手順が足りておらず。本当に告白したかった相手、地元の名家のお嬢様、深雪(表紙左端)ではなく。いつも彼の事を弄ってくる、読者モデルもこなす学年一の美少女、花恋(表紙中央)に告白してしまい。実はこっそり彼の事が気になっていた花恋が告白を受け入れた事で、二人は恋人同士となったのである。
級友達からも祝福され、実は人違いでしたと言う事も出来ず。一先ずそれを受け入れざるを得なくなる中、花恋に告白して玉砕した先輩たちの余計な言葉で。男除けの為、という勘違いをしてしまう。
「楽しかったなぁ」
しかし、花恋は違う。だってもともと、好きであったから。故にこの関係は望むもの。一緒にご飯を食べたり、ゲーセンでデートしたり。 何気ない日々の中、もっともっと、と彼の事を好きになっていく。
「っしゃオラ」
だが、そこに不穏の影が一つ。何を隠そう深雪である。お付きの人である青木さんに何故か光太郎の背後関係を探らせ、更には先輩たちを唆して二人の恋路を邪魔しようとする。 天使のようないつもの様子からは予想もつかない、悪魔のような笑顔で。
一体なぜ、そうなっているのか? それは急遽設けられた深雪とのお見合いの中で明らかになる。それはお人よしに過ぎる光太郎が抱えている秘密。
「そんな時でしたわ、一人の少年の姿をした神が私の前に舞い降りましたの」
更に明かされるのは、深雪が抱えている秘密。 それは光太郎へ向けていた、あまりにも重すぎる愛。 幼少期に色々あって、まさに救いの主、になってくれた彼の事を彼女は信奉していた。故に彼女は彼の事を手に入れようとしていくのである。
さて、そうなっていけば始まるのは恋のさや当て。 彼の事を渡したくない、という思いが廻り交錯し合う中、花恋が受けるオーディションの中で。大人の謀略が蠢き、邪魔をしようとする。
「―――君の『彼氏』なんだから!」
そんな事は、許せない。花恋を助ける為、これが自分に出来る事だと言わんばかりに道なき道を爆走する光太郎。彼は一人には非ず。 彼を溺愛する祖父たちを始めとする、彼と縁を繋いだ者達が手を貸し。 花恋を夢の舞台へと送り出していくのである。
ああ、この作品は正しくかの「ラスダン」の風が感じられる、その系譜を継いでいる、と言えるのかもしれぬ。 笑いに溢れ、そして真っ直ぐな恋路に心擽られる。まさにとーんと、おっこちきるようなラブコメが繰り広げられている、まさに完璧な作品である。
故に、ラブコメが好きな読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。