読書感想:攻略できない峰内さん

 

 さて、TCGと書いてトレーディングカードゲーム、略してトレカというのだが。例えば世界大会を優勝されたプレイヤーの方が使っていたデッキと、そのまま同じデッキを組んだとしても、自分が強くなれるという訳ではない。大切なのはデッキの強さではなく、デッキ、そして大会等で使われるデッキへの理解度である。 どう戦うかを理解して、予想だにしない場面でどう動くかを考えて。積み重ねの先に、初めてそのデッキを使えるようになって、結果的に強くなれるのである。

 

 

と、まぁTCGプレイヤーの端くれとして語ってしまったが、この作品はTCG系のラノベかと言われるとそうではない。むしろそうではない。この作品はカードゲームやボードゲーム等、アナログなゲームを題材にした作品なのである。

 

身体が大きいくらいしか取り柄のない少年、剛(表紙右下)。彼の唯一の趣味がボドゲであり、入学した高校でそれが高じて、自身でボードゲーム同好会を設立し、しかし部員が集まらぬと言う問題にぶちあたり。そんな中、勧誘のポスターを熱心に見ていた先輩、風(表紙中央)と遭遇する。

 

「おかしいな。なにがまずかったんだろう?」

 

話す中で分かったのは、彼女が世界でも有名なTCGでかつて世界ランク三位までいった強豪であった、という事。その魅力に惹かれ、まるで告白のようなセリフでお誘をかけて敢え無く断られ。入部をかけてゲームで勝負するも、敢え無く負けてしまう。

 

「ここはやはり、先輩に一肌脱いでもらうしかないんじゃないでしょうか」

 

しかし、一度負けたくらいでは諦められぬ。ジェンガハゲタカのえじき等、次々と手を変え品を変え様々なゲームで挑んで。しかし、TCGだけではなくゲーム全般が実は強かった風に、いつも惜しい所で敗北し。

 

そんな中で、実はゲーム好きであったクラスの優等生、夕陽に揉まれたり。お堅いように見えて、実はゲーム全般がダメダメな生徒会副会長、静香に目を付けられ何度も負かすことになったり。 時に服を脱ぎかけたり、時に風がちょっと嫉妬したり、相合傘をしたり。負け続ける日々の中、少しずつではあるが二人の関係は近づいていく。

 

その最中、廃部の危機を突き付けてくるのは、実は風に因縁があったらしい生徒会会長、美礼。静香のボドゲ部入部をかけ、TCGで勝負をつけることとなる。

 

「ただ、ちょっとだけアドバイスさせてくれ」

 

初めて触れるカード達、相手となるのは完璧な才媛。勝負の鍵となるのは、先輩のアドバイス。あの日の焼き直しのような、見事な一撃必殺であり。その先に存続の未来が繋がるのである。

 

架空も現存も、様々なゲームを繰り広げ。その何気ない日常の中でほんのりラブコメするこの作品。 何気ないラブコメが好きな方は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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