さて、バレてはいけない秘密というものがあり、明かした方がいい秘密、というのもあるかもしれない。秘密、というのは色々な種類がある。その中でも明かしてはいけない秘密、というのはやはり人間関係を揺るがすような秘密であろうか。既に築かれている人間関係を壊してしまうような秘密は、明かしてはいけないと言えよう。
「今、恋とかそういうのに興味ないんだ」
クラスの中でもカリスマ的存在である、志穂という級友の告白を如何にも嘘みたいな理由をつけて断った少年、英治郎。何故彼はそんな嘘をついたのか。それは過去の経験から、誰とも深い関係になろうとせず、「みんなの理想の友人」となって居心地の良い空間を作ると言う目標があったから。故に、彼は告白を断ってしまったのである。
その贖罪も兼ね、英治郎は志穂が気にかけている級友に関わろうとする。その名は未悠（表紙）。長い前髪で目元が見えず、話しかけると呪われるとさえ噂される彼女。だが、関わろうとした途端に彼女が落としたペンダントから驚愕の事実が判明する。それは、彼と未悠が双子の兄妹であり生まれた直後に仮定の事情により離ればなれとなった、という事である。
「わたしに友達の作り方を教えてください・・・・・・！」
彼女に秘密がバレるのを防ぐため、彼女の今の生活を守るために距離を取ろうとするも、勇気を出した彼女から友達の作り方を教えて欲しい、と依頼され。距離を取りきる事も出来ず、彼女の意識改革から始め、まずはイメチェンから、と様々な情報を集め奔走していく事となる。
その様子を志穂に見られて誤解されたり、その誤解を解くために彼女を訪ねて仲間になって貰ったり。友人である遥翔と紗季も巻き込んで、少しずつグループを結成し。少しずつではあるが、未悠は受け入れられていき彼女の世界は広がっていく。
だが、その裏で英治郎の心は迷っていく。未悠の今の両親との邂逅、そして彼女の成長を見守る中で。もう彼女の隣に居なくてもいい、いるべきではないという結論を出し。敢えて周りを巻き込んで自分が悪役となってでも、皆から距離を取ろうとする。
「それはわたしが真藤くんの友達だからです」
しかしそれは、過去の間違いの焼き直しに過ぎない。それに気づく事も出来ぬまま、踏み出そうとした一歩を未悠は止める、友達として。止められて気づく、自分の行いがどんな結果を生んでいたのかという事を、あの日自分が持っていなかったものを。だからこそ今、選んだ。新しい未来へ繋がるあの日とは違う選択肢を。
友情が温かく、仄かなラブコメが心に甘いこの作品。友情が光る作品を読みたい読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
コミュ症なクラスメイトと友達になったら生き別れの妹だった (講談社ラノベ文庫) | 永峰 自ゆウ, かがちさく |本 | 通販 | Amazon
