さて、とみに一人暮らしというものは中々色々な事に金がかかるものであり、一人暮らしに関する様々な生活上の豆知識、というものがあるのもご存じの方も多いであろう。そんな知識を知っていれば、少しだけ生活で節約できた里、生活が豊かになったり、という事もあるであろう。といった感じの、生活、そしてそれ以上の豆知識に溢れているのがこの作品なのである。
「あ、もしよかったら、うちに来ます?」
ブラック企業に勤めるお人よしの青年、澄人。彼がある日、取引先との合コンで数合わせに参加し、共に終電を逃した女性。その名も来菜子(表紙)。職業がエステティシャンである彼女を、とりあえず他意はなく家に泊めることにし。しかし彼女は澄人の家が汚れていると彼の自嘲気味の発言を聞いた時、目の色を変える。
「是非お邪魔させてください!」
そう、彼女は無類の綺麗好きであったのだ。そして彼女は「美しさの本質は健康」、という考えの持ち主だったのである。健康は土台、その上に美しさがある。そして健康になるには、周りが汚くては意味がない。そう言わんばかりに彼女は、澄人の家を隅々までぴかぴかにし。今度掃除の続きをしたいから、と彼と連絡先を交換し。そんな所から二人の縁は、関係は少しずつ繋がっていくのである。
お掃除に始まり、自分にでも出来るマッサージ。更には料理初心者にも簡単に作れる料理から、ダイエットまで。様々な知識を披露しながら、少しずつ二人で過ごす時間は増えて行って。澄人の従妹である清音とも知り合って。ちょっとずつ、来菜子の中で彼と過ごす時間の大切さが増えていく。
しかし、来菜子より先にまず、澄人の方に問題が訪れる。彼女のお陰で日常生活が豊かになったのは確かであるが、そちらの方を重視してブラック企業における理想の姿とは徐々に乖離してしまって。結果的にクビ宣告を受け、一先ず父親からの電話でアドバイスを貰い。自主都合の退職ではなく、会社都合の退職としてもらって。今までのサービス残業の分の残業手当も払わせたうえで、無職となる事に成功する。
しかし、もし無職となった事がある読者様がおられれば分かるであろう。例え無職となった所で、お金が無限に続くわけでは、基本的にない。つまりは次の職場を探さなければいけないのである。
「大丈夫ですよ、大丈夫」
当然、焦りは募る。そんな焦りを来菜子は受け止めてくれて。そんな彼女も、上司との軋轢で働きにくくなって。彼女の愚痴を今度は澄人が聞き、その心に寄り添う事となっていく。
「って、それはさすがに自暴自棄すぎるかしら」
その受容に心が救われて。心が彼に惹かれている事を否応なく自覚して。来菜子の中、抑えきれぬ気持ちと共にちょっと罪悪感が芽生えていくのである。
生活の豆知識もある、大人のうぶなラブコメを楽しんでみたい読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
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