さて、些細な事でも偉いと褒めてくれるのはコウペンちゃんであり、苦悩をお預かりしてくれるのは物知りなシロクマさんであり、美味しいものを作ってくれるのはアデリーさんである。と、いうのはさておき、画面の前の読者の皆様は甘やかされたいと思った事はあられるであろうか。何かに疲れ、何かに挫け。そんな時に誰かに甘やかしてもらいたいと思われた事はあるであろうか。
甘やかしてもらいたいと思っても、現実においては中々に難しい。年を経るほどに甘やかしてくれる存在は貴重となり、最終的に自分を甘やかせるのは自分以外いなくなっていくものである。
でも、無条件に肯定されたい。そういった想いを捨てきれぬ読者様もおられるであろう。
その願いに答えるかのようなヒロインが登場するのがこの作品なのである。
両親の事故死による急逝、更には遺産を狙う親族。突然に面倒事に巻き込まれ、自身の年齢を偽り日々生活費を稼ぐためにバイトに励む少年、春幸。
「私のヒモになっていただけないでしょうか!」
しかしある日、暴漢から救った少女によりその日々は終わってしまう。何せ救ったのは大企業の令嬢であり自身もまた事業を手掛け大きな金を動かす級友、冬季(表紙)であったから。必然的に嘘がバレ、無職になる春幸に冬季は告げる。あなたを甘やかしたい、結婚してほしいと。
ほとんど交流も無いはずなのにぐいぐい来る彼女に押し込まれ、一先ずお試しで始める同棲生活。
「頑張り続けたキミに”頑張ったね”って言ってあげたくて・・・・・・」
だがそんな日々の中、冬季はこれでもかと春幸を甘やかしていく。同衾や混浴などの行為で春幸を驚かせながらも、彼の事を無条件に愛し、肯定していく。今までの生活の中で失っていた行為を、愛を、惜しみなく彼へと注いでいく。
気恥ずかしくて、戸惑いばかりで。素直に受け止められなくて。しかし、周りの世界は優しくばかりはない。冬季と急に仲良くなり始めた春幸へと嫉妬とやっかみは集中していく。
自分なんかが傍にいてもいいのか、思い悩む。けれど親友の手荒い激励で改めて思い出す、いつの間にか芽生えていた恋心。彼が本当に大切にすべきもの。
「私はずっとあなたの味方ですから」
いつでも味方でいてくれる、背を押してくれる。そんな彼女に相応しい、並び立つ存在でありたい。そう決意し、春幸は変革のための一歩を踏み出していく。誰にも否定できぬ未来へと繋がる、大きな一歩を。
何という事だろう、正に心を撃ち抜いてくるのは何故だろう。それはこの作品が、まごう事無き純愛ラブコメであるからである。そしていちゃいちゃと甘やかしにきちんと根っこがあり、応援したくなるからなのである。
真っ直ぐな純愛ラブコメを読んでみたい読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
今日も生きててえらい! ~甘々完璧美少女と過ごす3LDK同棲生活~ (電撃文庫) | 岸本 和葉, 阿月 唯 |本 | 通販 | Amazon