読書感想:ランジェリーガールをお気に召すまま

 

 さて、ブラジャーやショーツ、それ即ち「ランジェリー」と呼ぶものであり、店頭に陳列されていると男子にとっては目の毒になり得るものである、のかもしれない。しかし女性の方にとっては勝負の時に纏う服ともなる服であり、自分に合ったものを付けるべき服である。男性よりも女性の方が多分複雑な筈の下着事情。では、そんな下着を作っているのはどんな人達なのだろうか。この作品は、そんな「下着作り」を「お仕事」として真っ直ぐに、そして情熱的に描いていく作品なのである。

 

 

とある苦い経験から、新しい下着を買うのに苦手意識があり、地味な下着しか身に着けぬ少女、澪(表紙)。憧れの高級下着ブランド、「リュグ」の下着が陳列されたショーケースを見ては溜息を付き、憂鬱な日々を過ごす中。ある日、着替えを蛍太という少年に覗かれた事からこの作品は幕を開ける。

 

「よかったら、俺のパンツを穿いてくれませんか?」

 

 そんな事を目を輝かせながら宣う彼は、変態・・・ではない。彼こそは何と、澪が憧れた下着ブランド、「リュグ」のデザイナーだったのだ。

 

あっさりと彼の目により、過去の苦い経験の真実が紐解かれ、彼女をイメージしてデザインしたと言う下着は彼女にぴったりとフィットし。その引き換えとして、試作品の供与を対価に澪は蛍太の下着モデルを務める事になる。

 

先輩モデルとして、学校でも先輩である蛍太の幼馴染、絢花と出会い。わちゃわちゃしている間に押し倒されてしまったりと賑やかな日々の中。蛍太は依頼として、胸の大きさに悩む元子役、雪菜の願いに向き合っていく。

 

彼女が願うのは胸が目立たなくなる下着。その願いをかなえるために試行錯誤するも、中々イメージは掴めない。何故か。それは彼がそんな事を望んでいないから。彼女と言う美を引き立たせるのには、彼女の本当の魅力を引き出す為にはその方向性では叶わないから。

 

「仮にたくさんの人のもとに届かなかったとしても、俺の下着の良さをわかってくれる人や、必要としてくれる人が手に取ってくれたら、その誰かのために頑張れるから」

 

 商売としてなら、その考え方は誤りであるのかもしれない。だが、今貫くべきは商売人としての考えではなく、デザイナーとしての考え。見事に貫き生まれるのは、雪菜の心の蟠りすら包み込み後押しする、彼女の為の下着。

 

お仕事ものの熱さがあり、更にはちょっぴり変態な少女達の可愛さがあり。そんな中に、カップサイズの算出方法や、創作の世界では割といる、○カップ以上の女性の希少さといった豆知識もある、何かに詳しくなれて盛り上がれるのがこの作品である。

 

何かの情熱で心燃やしたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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