読書感想:現役JKアイドルさんは暇人の俺に興味があるらしい。 1

 

 さて、アイドルと言えば現在世間は某超大手アイドル事務所が隠していた闇に関する話題で局所的に揺れている訳であるが、そもアイドルと言うのはラブコメにおいてヒロインになるとどんな存在として描かれるであろうか。例えば高嶺の花、身分違い。そんな印象を持っておられる読者様もおられるだろう。しかしそんなアイドルだって一人の人間。ファンが神秘性を以て神聖視する事はあろうとも、そこにいるのは普通の「一人」なのである。

 

 

 

この作品はそんな作品である。級友である大人気アイドルと何気ない日常を積み重ねながら、少しずつ距離を近づけていくお話なのだ。

 

「ね、君って暇人なんでしょ? 今日の放課後、一緒にゲーセン行かない?」

 

部活は帰宅部、特技はヒマつぶしを見つける事で面倒くさがり。言葉にすると割とモブ寄りな少年、航。ちょっとしたピンチに陥った彼を助けてくれたのは、級友であり現役アイドルでもある菜子(表紙)。日々芸能活動で忙しくしているから普通の青春を知らず、友達も中々いなくて。そんな彼女に目を付けられ、振り切ろうとするもぐいぐい迫られ。結局押し切られた彼は、放課後に一緒にゲーセンに行く事となる。

 

 それで終わる筈だった、だけど終わらなかった。彼は見たのである、何を? アイドルとして神聖視されるからこそ周囲から距離を置かれる彼女の「リアル」を。「アイドル」としてではなく、一人の「人間」としての彼女の素顔を。

 

レトロゲームに目を輝かせた莉、意外と成績が悪かったり。一緒に牛丼を食べたり、文化祭を二人きりで楽しんだり。航の幼馴染である詩乃も含め三人で勉強会をしたり、動物園に行ったり。少しずつ彼女が日常の中に侵食を始める中、いつの間にか菜子にとってはその時間が大切なものとなり。航にとっても、面倒くさがりな彼の中でいつの間にか彼女の居場所が出来ていく。

 

会える時間はごく僅か。それでもそんなわずかな時間が大切で。いつの間にか、お互いの存在が拠り所となっていって。

 

「これからもずっと、隣にいてくれる?」

 

そんな君だからこそ、これからもと望む。その望みは、重なっていく。一瞬の逢瀬の空に花火が咲く中で。少しだけ二人の、今は友情は深まっていくのだ。

 

だけどまだ、彼女達は知らない。身近な不穏が彼の事を狙っている事なんて。

 

弾むように、弾けるように。爽やかな青春が心をくすぐる中で、真っ直ぐな思いが心を突き刺してくる今作品。真っ直ぐな青春、何気ない日常が好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

現役JKアイドルさんは暇人の俺に興味があるらしい。 1 (オーバーラップ文庫) | 星野星野, 千種みのり |本 | 通販 | Amazon