読書感想:ブラックガンズ・マフィアガール

 

 さて、VRと書いてヴァーチャル・リアリティと読むのは画面の前の読者の皆様はご存じであろう。ではVR、ひいては電脳世界と聞いて、皆様はどんな作品をイメージされるであろうか。SAOという読者様が主流であるかもしれないし、もしかしたらロックマンEXEのような懐かしい作品をあげられる読者様もおられるかもしれない。しかしどちらにせよ、電脳世界、我々の現実世界とは違う魍一つの世界は古来から物語の題材となり。人々を魅了してきたのは確かである。

 

 

 

しかしどんな世界にも、悪となる存在がいるのは確かである。例えばSAOには「笑う棺桶」のような悪人たちがいるし、ロックマンEXEの世界にもウイルスやら悪の組織は存在している。 この作品もまた、そういった世界を舞台とした作品なのだ。

 

舞台となる2070年、その20年ほど前の事。量子コンピューターと神経リンクデバイス、更に体内ナノマシンの普及がほぼ完了したことで、過去のオンライン・サービスすべてを包括した「VRSNS」という世界が構築され、今や三つのそれが主流となり人類の過半がいずれかを利用している今の時代。

 

「わたしが記録に埋めてあげます」

 

この世界の暗がりで活動する裏の世界の者達。その名も「電賊」。この仮想現実の世界で進化した次世代マフィア。その組織の一つ、「ウルヴズ・ファミリー」の一員である少女、マーリヤ(表紙右)。 彼女はこの世界の脆弱性の証である物を持っていた。宛先不明のメールに添付されるアプリにより、そうなった。その名も「グリッチャー」。己の中の何かを捧げ「力の本領」を創り出す事で、超常の力を行使できる代わりに、戻れなくなった者達。その力で、あらゆるセーフティも、物理法則をも破壊できる存在。

 

―――器を検出―――

 

彼女がある日、組織からの任務で追っていたのは、「R・O・O・T」と呼ばれる謎のアプリ。しかしそれは、偶々部活動で受け渡し現場に居合わせた少年、ナオト(表紙左)を器としてダウンロードされ。あまつさえ、訳の分からぬままにマーリヤの「力の本領」の制御権を奪い、自分の物としてしてしまったのである。

 

 

訳も分からぬ、だが一先ずこのアプリらしきものを返したい。部長であるカンナの提案でVRSNS上で接触するも、他の組織の強襲を受け。 訳も分からぬまま、状況は動き始める。

 

彼にしか使えぬこのアプリ、狙うは無数の組織。 任務失敗により二週間後の処刑を命じられたマーリヤ。

 

「普通なんだ。極めて稀で、普通な感性なんだ」

 

彼女と、その組織に守ってもらう事となり。引き換えにいくつかの条件を出し。始まるのは、マーリヤを護衛とする生活。

 

けれど状況はいつでも、止まる事を許さない。 裏の世界に一歩踏み込んだ事で、一気に鉄火場に関わる事となり。更にそれぞれの信条に基づき動く者達が暗躍し、次々と敵と味方が入り乱れていく中。ナオトは「力の本領」を通して、マーリヤの事を知る。裏の世界で生きてきた彼女が、抱えていたものを知る。

 

 

対し、マーリヤはナオトを通して、普通の世界を知っていく。光に溢れる、本来ならば生きてきた世界を知っていく。

 

「・・・・・・イン・ボッカ・アル・ルーポ」

 

彼女を知り、浮かぶは同情か。しかしそれの何が悪い? 非常識な場でも貫き通すその平凡が、世界の危機を乗り越える力となり。人の温かさを教えたマーリヤを助ける力となっていくのだ。

 

悪辣に血生臭いバトルの中で、確かなボーイミーツガールが楽しめるこの作品。SFとラブコメが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: ブラックガンズ・マフィアガール (MF文庫J) : 扇 友太, tatsuki: 本