読書感想:ソード・オブ・スタリオン 種馬と呼ばれた最強騎士、隣国の王女を寝取れと命じられる

 

 さて、種馬と一口に言っても競馬好きな読者様であれば牡か牝、どっちだと思われるのかもしれない。競馬における血統の配合というのは中々複雑なものがあり、クロスと呼ばれる配合で興奮できる方もおられるかもしれない。この馬とこの馬を掛け合わせたらどんな馬が生まれるのか。そんな夢を、ダビスタ等のゲームで見られた読者様もおられるかもしれない。

 

 

と、まぁそんな話題はさておき。この作品の主人公であるフリーの傭兵である青年、ラスは「極東の種馬」という異名を持っている。しかしそれは良い意味ではなく蔑称なのである。

 

様々な魔獣が存在するとある星、その片隅にある皇国。かの国が過去に繰り広げたとある紛争の最中、上位龍と呼ばれる強大な魔獣を敢えて目覚めさせて敵軍にぶつけると言う作戦で、恋人であった皇女、フィア―ルカ(表紙)を亡くし。失意の中、ラスは彼女を忘れるためと言わんばかりに娼館へ入り浸り数多くの女に手を出し。いつの間にか「極東の種馬」と呼ばれ蔑まれていた。

 

「これでようやく、私の言葉できみと話ができるよ」

 

そんなある日、皇宮から届いたのは召喚命令。皇帝より託されたのは、魔獣と戦う為のロストテクノロジーで作られた鋼鉄の巨人「狩竜騎」の一騎、そして筆頭皇宮衛士という立場。皇太子であるアリオールの補佐を命じられ、否応なしに仕える事となり。そこで彼は、ここに呼ばれた理由と本当の真実を知らされる。

 

それはあの日、本当に囮となったのはアリオールであり、フィア―ルカが彼女のフリをしていると言う事。その真実が今、露呈しては国の内乱、ひいては崩壊を招きかねない。だからこそ今、持ち掛けられた隣国の王女、ティシナ王女に秘密がバレるわけにはいかない。だからこそ彼には、王女の心を奪って欲しい、という依頼だったのだ。

 

まずであいとなるのは一か月後のイベント。そこに備え、まずは功績を得るために。フィア―ルカの指示の元、ラスはさっそく行動を始める。

 

そして、ラスの怪物が如き腕前は明かされていく。そも、彼はただ腐っていた訳ではない。彼が根城にしていた娼館は、四人しかいない実力者「剣聖」の一人であるフォンが経営する店。堕落しているように見せかけて、彼はあの日から自身の武を、牙を研ぎあげ続けていた。そして、フォンがかつて駆っていた意思を持つ狩竜騎、ヴィルドジャルタに認められ。その外部端末である獣人の少女、ココを相方にラスは早速隣国に潜入を開始していく。

 

「私の運命の方―――龍殺しの騎士ですわ」

 

そこで出会うティシナ王女。だが彼女は、ラスを知っている様子を見せれど、何故か彼を遠ざけるような行動を見せる。彼に見せぬ内面、そこに何か思惑を隠しながら。

 

いずれにせよこの作品はまだ始まったばかり。作者である三雲岳斗先生が今まで書かれた作品で磨かれた「好き」がこれでもかと詰め込まれた、一本筋の通った纏められた面白さがあるのである。

 

心踊る物語が好きな読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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