読書感想:喋らない来栖さん、心の中はスキでいっぱい。2

 

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読書感想:喋らない来栖さん、心の中はスキでいっぱい。 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、心の声が聞こえると言う中々に刺激的な秘密から始まった律と瑠璃菜のラブコメであるが、ゆっくりと深める、というだけでこの作品は進んでいくのか、と聞かれると実はそうでもない。只のラブコメからここから青春系にシフトしていく、としたらここからはどんな存在が必要であろうか。

 

 

それは言うなれば「恋敵」、好敵手の存在。多角的な要素を加える事で、ラブコメは青春へと昇華していくのである。

 

コミュ力向上訓練も一段落し、迎えた新学期。腹黒だとバレている生徒会役員、さくらや律の中学時代からの友人であり何となく居心地のよい関係である涼音も同じクラスとなる中。コミュ力に少しだけ自身の着いた瑠璃菜は、まだまだ未熟なれど確かな変化として、自分から周囲と関わり始め。律が見守る中、少しずつ周囲へと関係性を広げていく。

 

(これからも仲良くしてくれたら嬉しい・・・・・・えへへ)

 

 瑠璃菜の微笑ましい努力が有ったり、さくらが空回りするほのぼのとする一幕が有ったり。そんな日々の中、瑠璃菜の不意のデレが律の心を突き刺していく。普通の友人よりも少しだけ距離の近い友人同士としての距離感で、休日を共にしたり。少しだけ、深い関係となっていきそうになる中。涼音への、律がついた嘘の判明から、二人の関係は急速に動き出していく。

 

「私と律の関係って、なんだろうね」

 

2人の出会いを振り返り、何となく居心地のよい関係であるという現状を見返して。馴れ初めを語り、始まりから今までを振り返る中。涼音は押し殺そうとしていた思いが隠せなくなっていく。瑠璃菜と律の仲を見て、捨て去ろうとした思いが芽生えていく。

 

「律に負けないから覚悟しといてね」

 

諦めようとした思い、そして自分の夢。瑠璃菜の過去を聞き、彼女のように生きてみたいと影響を受け。高らかに宣言し歩き出した涼音の内心、溢れ出した言葉が律の心を揺らす。

 

だが、ここまで描いてきた中、ヒロイン達の問題を通じて。主人公である律に隠された問題も、徐々に仄めかされていく。自分の思いには鈍感な彼は、一体何を抱えているのか。スキという思いには色々な色はあるけれど、様々な意味を持つのも確か。ならば「隙」を埋めると言うのが、きっとここからの命題になるのかもしれない。

 

青春が本格的に始まり、多角的な面白さに繋がっていく今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。