読書感想:完璧な俺の青春ラブコメ 1.ぼっち少女の救い方

 

 さて、最近陽キャ側から描く青春ラブコメも増えてきているし、最初は低スペックな主人公が成長していくのではなく、最初からハイスペックな主人公が活躍するラブコメ、というのも増えている次第であるが。能ある鷹は爪を隠す、というのとは違うかもしれないが、ハイスペックというのは天然で保てるパターンは少なく。その裏で様々な努力をしている場合もある。そして、いくらハイスペックだとしても、一人の年頃。まだまだ成長の余地はどこかにあるのである。

 

 

「少女漫画から出てきたイケメン」、「何をやらせても出来る男」。それがこの作品の主人公、涼真(表紙右)に与えられた評価。その評価に恥じず勉強、運動共にトップであり全校生徒の憧れの存在。その評価を守る為、日々隠れて努力を重ねる彼。

 

「教室の後ろの席って、全体がよく見えるんだよ。背中ばかりであってもさ」

 

忌まわしさすら覚える早逝した父親との因果を感じつつ、クラスメイトとは良好な関係を築きながらも飛び越えぬ一線を守りながら。そんな日々の中、彼は真面目過ぎてぼっちになってしまった級友、みなみ(表紙中央)の憔悴を目にし。ポリシーを曲げてでも、彼女に関わる事を決める。

 

「友達作ろう、木下」

 

大嫌いな父親のようにはなりたくない、だからこそ深入りはしない。いつものように、立ち直らせたら離れる事を決意し。彼女に友人を作らせ、クラスに馴染ませるべく。まずは勉強を教えてもらうという名目で懐に入り込み。自分のペースに巻き込む事で、彼女が自分自身を変える一助となっていく。

 

「楽しいよ、あいつと話すの」

 

その日々は、涼真にとっても好ましい物で。いつの間にか、彼女自身を気に入っていく。その本心を期せずして聞き、恋心を発芽させるみなみの裏、涼真は自分を自戒しようと気を引き締める。

 

「なんの慰めにもならないけど、あたしとあんた、何も変わらないから」

 

そしてみなみもまた、級友でありみなみにとっては恋敵となる少女、亜衣梨から自分の今の立ち位置を突き付けられる。同じように救われた者として、その最後に待っている結末を示され、己の分を弁えさせられる。

 

「あなたが困っていることがあるのなら、その支えになりたいです」

 

だが、最後とばかりに涼真から届けられた母親との和解の機会。それを押し付け、涼真からすれば過去になる筈だった。だが、みなみはそれは嫌だと突き付けた。自分の偽らざる本心を伝え、貴方の傍に並べる自分になるからその時に応えて欲しい、と告白を告げたのである。

 

それは正に、予想外のパターン。いつもとは違う予想外の事態は、涼真の心を変え始めていくのである。

 

ちょっぴりしんみりしつつも、真っ直ぐで鮮烈な感情の迸るラブコメである今作品。王道なラブコメが読んでみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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