読書感想:陽キャになった俺の青春至上主義2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:陽キャになった俺の青春至上主義 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 青春の前には陰も陽も関係ない。そう言わんばかりに前巻で己の主張を突き付けた、橋汰であるが。陰陽混じる彼の友だちグループにおいて、陰は陽に憧れ変わろうとしている。しかし、陽にも陰は必要であると画面の前の読者の皆様は思われないだろうか。そして憧れるだけでは見えてこないものがある。陽側の代表とも言える、橋汰の想い人である夏絵良に焦点を当てていくのが今巻なのである。

 

 

太陽のような人間であっても、人間は太陽にはなれない。人間は何処までいっても人間なのである。それはどういう事なのか。ここから触れていきたい。

 

「まだふわふわとしていて、放っておけないんですよ」

 

前巻、遊々を巡る柵をぶち壊した事でクラスでもリーダー的な立ち位置になる事となり。とりあえず優等生のままで迎えた夏休み。しかし遊々はまだ橋汰の目から見て放っておけず。好意はないでも最大限の親切として、何とかなるまでは見守る事を決める中。橋汰達友人グループは、茨城で旅館をやっている夏絵良の叔母の元で二泊三日の泊まり込みバイトをする事となり、六人で一路大洗へ向かう事となる。

 

いい機会であると言う事で狙うのは、夏絵良の心。しかし女将である叔母、夏葉の方針によりラブコメは禁止であり。作務衣に着替えて早々、新人教育している暇はないと言わんばかりに扱き使われる事となるも、飴と鞭はしっかりとしており、まかないとして出たご飯で胃袋を掴まれて。喜び勇んで働く事となる。

 

更にはここに来ても、遊々、水乃、龍虎からの自分を変えたいと言う相談が持ち込まれる事となり。それぞれ「陽キャ化計画」、「イキらない計画」、「メスガキ化計画」という三つの計画を立ち上げ彼女達をサポートする事となる。

 

そんな中、夏絵良と二人きりになろうと機会を伺う中で。団体客としてきた女子サッカー部の中にいた夏絵良のかつての友、その再会に曇る彼女の顔がどうにも気にかかるも、茫洋として曖昧な様子に触れることは出来ず。自由時間に皆で海に行ったり、釣りに行ったりと海でしか出来ぬ青春を過ごす中で、ラブコメに繋がる切っ掛けが掴めない。

 

そろそろ皆様もお察しであろう。完全なラブコメにするのなら、まずは夏絵良の事を知らねばならぬのだ。

 

「この目で見たものしか信じねえって、俺は決めてんだ!」

 

取っ掛かりとなるのは、徒然の言葉。夏絵良の過去を知り、そして馬鹿で真っ直ぐだからこそ偏見のない彼の、真っ直ぐな言葉を受け、橋汰は夏絵良と向かい合う。

 

「助けてやるよ、いつでも」

 

彼女が語る本心、そして願い。本当の意味で太陽になるにはどうすればいいのか。その手助けを橋汰がする事になりようやく始まるのである。本当の意味での、ラブコメが。

 

夏という季節に、スタートラインに立つ今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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