読書感想:彼女の“適切な距離”が近すぎる2

 

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読書感想:彼女の“適切な距離”が近すぎる - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、この作品の一巻が発売されたころは、まだ新型コロナウイルスが猛威を振るっていた頃であるが、現在の世界はどうなっているかというと、この世界で生きておられる皆様はもうご存じであろう。下火、というにはまだ遠いかもしれないが、それでも少しずつ、ウイルスとの共存が進み、マスクオフに出来る機会も増えてきているなど、少しずつ好転に向かおうとしている次第である。

 

 

という前置きはともかく、この作品においてはまだまだ新型ウイルスは大流行中であるというのをご承知いただきたい。だがそれも仕方のない事である。執筆されている時期と発売される月には、若干の間隔がある筈なので。

 

「これから数日後、政府から緊急事態宣言が発出されるわ」

 

期末テストも終わり、夏休み。前巻で本当の恋人同士になった夕市と凪咲にとっては、初めての恋人同士としての時間。それは待ち望んでいたはずだった。だが突然呼び出してきた玲が齎した情報は、それに暗雲を齎す形となる。

 

「緊急事態宣言中の模範的カップルとして過ごしてもらうわ!」

 

・・・筈であったが、事態は別の意味で幸運を持ってくる。巣ごもり生活の配信という名目で凪咲が夕市の家に泊まり込むことになり。期せずして二人の同棲生活が始まるのである。

 

ひとつ屋根の下でノルマであるフォロワーを増やすべく、料理に挑戦して失敗して、結局亜紀の力を借りたり。ホラゲを二人でプレイして凪咲が涙目になったり。未熟は未熟なりに時に失敗したりしながらも、恋人らしい巣ごもりイチャイチャを繰り広げていく。

 

だがそこへ、不意打ちが如く更なる不穏は牙を剥く。夕市の父親の職場でクラスターが発生し、父親が帰れなくなり。更には亜紀の両親も感染してしまった事で、彼女も夕市の家に泊まることになり、それと入れ替わるように、体調を崩した玲の看病のために凪咲が一時離脱することになってしまったのだ。

 

亜紀と気の置けない距離感での、阿吽の呼吸めいたやり取りの中に落ち着きを感じ。凪咲とリモートでデートしたり勉強会をしたりする中、中々触れあえずに凪咲がむくれたり。二人の間で心が迷う中、大切にするべきなのはどちらかを考える事になる。側に居てほしいという、亜紀の気持ちに向き合う事となる。

 

「でも、凪咲は俺の彼女なんだ。辛そうにしてるのを放っておけない」

 

 大切なのは近くの幼なじみか、離れた恋人か。今、幼馴染を選ぶことは出来るであろう。だが、彼はそれを選ばなかった。タブーを破ってでも、彼女の元へ駆けつけるのを選んだのである。

 

その想いと行いが、もう一つ距離を詰めていく。もっと仲を深めていくのだ。

 

波乱に満ちた夏休みの中、うらやまけしからん甘さに溢れた今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

彼女の"適切な距離(ソーシャルディスタンス)"が近すぎる2 (GA文庫) | 冬空こうじ, 小森くづゆ |本 | 通販 | Amazon