読書感想:ひきこまり吸血姫の悶々9

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:ひきこまり吸血姫の悶々8 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、今巻の帯にもある様に大勝利、とはいかなかった訳であるが前巻は。「常世」に転移して早々、ヴィルに絡む因縁に絡まれ、更には新たな悪に目を付けられ。やはり引きこもっていられぬコマリはスピカと「逆さ月」に連れ去られてしまった訳であるが、それは一体どういうことか。即ちパーティシャッフル。いつもとは違う視点にいくという事である。

 

 

「私たちはお互いを利用し合って先に進まなければならない」

 

逆さ月のアジトで昏睡状態から目を覚まし、同じように保護されていたリンズとも再会し。状況理解に努めるコマリへ、スピカはお互いを利用し合う形での同盟を持ち掛け。彼女の目的である、引きこもりしか生きていない「世界平和」に賛同は出来ずとも、結局ついていくしかなく。実は常世がスピカの故郷であり六百年前に「天文台」という組織により追放されたという事実に驚きながら、彼女達と共に「星砦」の本拠地であると判明した鉱山都市、「ネオプラス」へと赴くことになる。

 

 到着して早々、採掘権は得るも指名手配をかけられ次々と刺客に襲われ。まとめてひっくり返す為に市長を捕らえて成り代わると言う計画を半ばノリで成し遂げて。暴走的なおひい様ことスピカの元に纏まる「逆さ月」のあり方を目撃しながら。鉱山の奥深くに眠る魔核を探し潜っていく。

 

立ち塞がるのは、意志力に関わる鉱石、「マンダラ鉱石」を核とする影の魔物、「匪獣」。少しずつ探索をする中、何故かコマリは「逆さ月」の一員であるフーヤオと行動を共にする事が増えていく。二重人格が如き二面性がある彼女の内面に触れていく。

 

話してみれば、まぁ話せる彼女。だが彼女の故郷はコマリの母親であるユーリンに滅ぼされたからこそ、その憎しみを抱く以上は決して分かり合うことは出来ず。

 

だが、よく考えてみてほしい。そもそも時系列的にそれは可能なのか。もしそれが真実ではないとしたら、本当の真実とは何処にあるのか。

 

その答えはすぐ近く、坑道の崩壊により二人で迷い込んだ鉱山の奥深く、衝撃の光景と共に明らかとなる。その場に現れたトレモロは語る、全てはあの日から自分が糸を引いていて、フーヤオにとっての故郷の仇はすぐ側に居たという事。

 

「お前はよく頑張った。もう何も心配しなくていい」

 

重すぎる事実に押し潰されそうになるフーヤオ、邪悪に嗤うトレモロ。許しておく道理は何処にもなし。躊躇いなく仲間だと言い、コマリはトレモロをぶっ飛ばす為にその力を解放し、トレモロをぶっ飛ばして見せる。

 

「短い間だが、世話になった」

 

「頼みがある。聞いてくれるか」

 

―――だが、最悪は唐突に訪れる。トレモロが遺した最悪の置き土産が負傷したコマリを狙い、それに対しコマリに希望を見出したフーヤオが身代わりとなって残り。戦いの果て、置き土産と相討ちになってしまう。

 

掛け替えのない存在の喪失、だがまだ悪は残っている。コマリの知らぬ所で意外な出会いも起きている、だが物語の裏で死んだと思っていた者達が胎動を始めている。

 

更に戦いが加速する中、いつか訪れる筈だった展開が来る今巻。シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

ひきこまり吸血姫の悶々9 (GA文庫) | 小林湖底, りいちゅ |本 | 通販 | Amazon