読書感想:君の先生でもヒロインになれますか?2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:君の先生でもヒロインになれますか? - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で日本史教師であるレイユと、その生徒である悠凪の、いずれ家族になるかもしれぬラブコメはスタートしたわけであるが。前巻ではレイユの家族事情が垣間見えた訳であるが、今巻では悠凪の家庭事情について触れていくことになる訳で。画面の前の読者の皆様は、悠凪もまた事情持ちであると言う事くらいはご存じであろう。

 

 

高校生であれば、一人暮らししている子も少しはいるかもしれない、では何故彼は一人暮らしなんてしているのか。その原因であるのが親の再婚で出来た義妹である輝夜。彼女と家族になり切れていない、からこそ悠凪は親元を離れているのである。

 

「前みたいに一緒に暮らそうよ」

 

そんな彼の家を訪ねてきた輝夜。家族旅行のお土産を渡すと言う名目でやってきて、兄妹と言う建前にしてはベタベタとくっついてきて。そんな現場をレイユは目撃してしまい、大人として一先ずは受け入れて夕食を共にする事になり。一先ず偽名を名乗った後、駅まで送られる中で輝夜は本心を明かす。また家に帰って来てほしいと言う本心を。

 

「君は困っているのに、近づくのを許している」

 

しかし悠凪的にはそれを受け入れる訳にはいかず。だけど引き離す事もしない、まさに微妙な距離感。その矛盾を指摘し、理由を問うてくるレイユに悠凪は事情を明かす。親の再婚で義理の兄妹になり、初めてできた全力で甘えられる相手であった悠凪に抱く想いがいつの間にか恋になって。その叫びを母親に見られてしまった事で、家庭崩壊一歩手前になり。自分が貧乏くじを自ら引く形で、一人暮らしを始めたと言う事。

 

「義理の妹は恋人にはなれないでしょう」

 

そこにあるすれ違いと軋轢、その原因の一つは認識の齟齬。 悠凪からすればありえない、偶々事情を知った旭も指摘するくらいには彼女の中でもあり得ない。だけど、輝夜の中では諦めきれない。

 

「誰よりも我慢していた君は、心の中でずっと怒っているんだよ」

 

爆発する思いの仲立ちとなったレイユは、悠凪の心の中、見ないふりをして封じていた本心を解き明かす。それは大人ぶって、いい子を演じていた彼の子供としての本心。何で自分が、という子供ならばあって然るべきの怒り。 その怒りを清算させようと、レイユは自分の心を普通という建前で押し隠して、悠凪を家族の元へと送り出す。

 

「俺はあなたに言われた通り、家族の元に帰ってきたでしょう」

 

しかし、悠凪は自分の意思で、一番リラックスできる人の元へ、家族以上の家族の元へ。また隣人協定を続けることを望んで、また二人の日々が始まっていくのである。

 

ちょっぴりシリアスさを増す中、更に甘さ深める今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: 君の先生でもヒロインになれますか?2 (電撃文庫) : 羽場 楽人, 塩こうじ: 本