読書感想:妹が女騎士学園に入学したらなぜか救国の英雄になりました。ぼくが。

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。皆様は読んでいて落ち着かれるラノベ、安心して読めるラノベ、と聞くとどんなジャンルのどんな作品を連想されるであろうか。その答えは千差万別、多種多様なれど無自覚な無双もの、と答えられる読者様はどれだけ折られるのであろうか。

 

 

要するに「俺、何かやっちゃいました?」という類の作品であり、この作品もまた、そういった安心して読める無双ものなのである。

 

魔族はいないけれど、天災クラスを始めピンからキリまで様々な魔物がいて。そしてかつ丼やら素うどんといった日本的な食文化がある、ゆるめなファンタジーなとある異世界。その世界の国の一つである、とある王国。その中に存在する王国騎士を育成するための王立最強騎士女学園。かの学園に現役騎士の試験官を倒して入学した史上二人目の新入生である庶民、スズハ(表紙右)。ある日帰ってきた彼女の言葉に、主人公であるスズハ兄、通称「兄さん」は戸惑っていた。

 

「兄さんがわたしなんかよりずっと強いこと伝えてきました!」

 

それはコテンパンに打ちのめされた相手に、既に騎士団トップクラスと目される自分よりも兄さんの方がずっと、強いと言う事。

 

「えっと・・・・・・もう終わりですか?」

 

そしてそれは正しい認識。彼は無自覚ながらも、挑んできた生徒会長であり公爵令嬢、ユズリハ(表紙左)の城門をも砕く一撃を受けながらも小動もせず。根源的な恐怖と、女としての野生の本能を彼女に抱かせる程に、強かったのである。

 

そんな彼を、公爵家が放っておくわけもなく。学園の試験であるゴブリン退治のお供に彼を連れ出したかと思えば、道中でユズリハを狙ってきた他国の暗殺者の悉くを瞬殺し、更には突如現れた天災級の魔物、「彷徨える白髪の吸血鬼」と互角以上の戦いを彼は繰り広げ。

 

そこまで見せられては、彼は注目株とならぬ訳もなかった。気が付かぬ間に公爵家の縁者として取り込まれ、ユズリハの親友であり王女でもあるトーコ(表紙中央)と縁を繋ぎ、彼女にも気に入られ。公爵家主催の屋外パーティで貴族たちにその力の一端を見せたかと思えば、軍からの命令で数十万ものオーガの変異種が巣食う森の防衛をスズハとユズリハ、兄さんの三人で命じられ。 圧倒的に戦力が足りぬかと思えば、樹海に住まう男禁制の戦闘民族、アマゾネスの面々をその力で魅了してしまい、「兄様」として敬愛されて。

 

正に彼を中心に、急速に世界が周り出す。今まで市井に隠れていた彼が表舞台に上がった事で、王国の歴史が動き出していく。王位を狙う争いは急に激化し、王子たちのクーデターによりトーコが囚われの身となってしまう。

 

普通であれば絶体絶命、しかし兄さんがいればそうでもなく。ユズリハたちの行動の裏、単身で潜入した彼は一発で全てを終わらせて。結果的に全てを掴んだトーコは女王へ成り上がる。

 

「約束だよ。絶対逃がさないんだから」

 

そして祝いの場、彼女のささやかな策略により。兄さんは庶民から貴族へランクアップを果たすのである。

 

いっそ清々しいまでに無双して、無自覚にハーレムして成り上がる。真っ直ぐな王道が詰め込まれ作者様の性癖がこれでもかと盛られているからこそ面白いこの作品。安心してラノベを読みたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

妹が女騎士学園に入学したらなぜか救国の英雄になりました。ぼくが。 (ファンタジア文庫) | ラマンおいどん, なたーしゃ |本 | 通販 | Amazon