読書感想:学生結婚した相手は不器用カワイイ遊牧民族の姫でした

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。皆様は遊牧民族と聞いて何を思い浮かべられるであろうか。遊牧民族、というとモンゴル。モンゴルと言えば朝青龍、という読者様は恐らくちょっとニッチな方面であるかもしれないとして、かのチンギス・ハーンが実は源義経と同一人物ではないかという都市伝説を知っておられる読者様は、多分歴史マニアであられるかもしれない。しかし画面の前の読者の皆様がイメージされるような遊牧民族、というのは実は今はそんなにいないらしい。今は定住する人も多いらしいし、IT化も進んでいるらしい次第だとか。

 

 

さて何故そんなお話になっているのかというと、この作品はつまりタイトルにもある通り、遊牧民族のお姫様、メイユエ(表紙)がヒロインだからであり、主人公である亨と学生結婚したからである。

 

 と言っても、二人は元々許嫁とかであった訳でもないし、何なら今まで接点もなく、それどころか二人ともそもそも結婚できる年齢でもない。ではなぜ二人は結婚しているのか。それは偶々来日していたメイユエが事故に見舞われそこに偶々亨も巻き込まれ。2人して死んでしまい「冥婚」と呼ばれる死後に結婚するマイナーな儀式を執り行われたからである。

 

けれど何の因果か、二人は同時に蘇生してしまった。その結果、どうなったのか。二人の魂は鎖のような因果に結ばれた状態で固定されてしまい。互いに一定距離離れると、相手に惹かれ自身の魂が自分の身体を抜けてしまうと言う事態になってしまったのである。

 

当然離れる訳にもいかぬ、と言う訳で従者である飛文も一緒に亨の家で、彼の妹である須玖瑠も含めて暮らす事となり。彼の通う学校にメイユエも通う事となり、新たな生活が始まる。

 

「甘えてしまって良いのだろうか?」

 

ある時は魂だけになったメイユエが体育の授業で男子生徒に憑りついて無双してみたり。またある時は、「開運部」という謎の部活に巻き込まれ、馬の亡霊の調査をしたり。そんな中、姫であろうと、強くあろうとするメイユエの心は徐々に変化を迎えていく。亨にサイクリングに誘われ出かけたり、二人で美味しいものを食べに行ったり。文化も暮らしてきた立場も何もかもが違う二人は、少しずつお互いの思いをすり合わせ。少しずつ熟成していくように、思いを深めていく。

 

「だから今度こそ、約束を果たす」

 

「私たちは二人で一人前なのだ」

 

 関係を深める中、心にちらつく忘れていたこと。その棘は、メイユエを狙う勢力に彼女が浚われ、二人して冥界に呼び出されてしまった時に思い出される。既に一蓮托生、だがだからこそ二人揃わねばならぬ。二人揃って一人前、一つの「夫婦」であるのだから。だからこそ二人はまだ「夫婦」であることを選び。夫婦として結ばれた力で、状況を覆して見せるのである。

 

「私はお前の奥さんだぞ。だから姑娘ではないだろう」

 

ひょんな事から出会い、ぶつかり合いながらも思いを深め、特別な関係になっていく。それ即ち王道不変、故に真っ直ぐに面白い。なので、王道なラブコメが好きな読者様には是非お勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

学生結婚した相手は不器用カワイイ遊牧民族の姫でした (オーバーラップ文庫) | どぜう丸, 成海七海 |本 | 通販 | Amazon