読書感想:新米錬金術師の店舗経営01 お店を手に入れた!

 

 錬金術、それは現実的な科学の法則に当てはめてみれば決して成立しない学問であるが、その追及の中で数々の実験技術の発展に寄与した学問である。という歴史のお勉強的な話題はさておき、画面の前の読者の皆様は「錬金術」と聞いてどんな作品を想起されるであろうか。鋼の錬金術師シリーズであろうか、それともライザのアトリエを始めとするアトリエシリーズだろうか。その答えは各自それぞれとして、錬金術をファンタジー世界でお仕事にするとどういう事になるのか。その答えをほのぼのとした日々の中で、お仕事系ファンタジーとして描いていくのが今作品なのである。

 

 

 

錬金術師が花形、エリート職業として扱われるとある異世界。その世界のとある王国出身であり、孤児院出身ながらも努力と勉強の末に王立錬金術師養成学校をほぼ首席で卒業した少女、サラサ(表紙)。卒業と同時に今まで貯めたお金で、錬金術師にとってのバイブル「錬金術大全」を購入した彼女は一つ、悩んでいた。

 

 それは「錬金術大全」があまりにも高価であった為、生活の基盤を整えるお金がないと言う事。そんな危機を前に、師匠である世界に一握りもいないマスタークラスの錬金術師、オフィーリアが一つの道を与える。それは王都から一か月ほどの距離にある大樹海近くの辺境の村、ヨック村で閉店した店を使って自分の店を作ると言う事。餞別として渡された店の権利書を抱え辺境へと旅立ち。村に到着したサラサを待っていたのは、寂れ少し荒れた店であった。

 

早急に生活基盤を整えねばならぬ。その為に早速行動を開始し。そんな中、幼き少女と言う庇護欲を誘う外見と、錬金術師という得難き職業であるからか。小さな村と言う閉鎖気味なコミュニティーの中、サラサはあっという間に地域に受け入れられ、馴染んでいく。

 

村の大工や金物屋といった人達に開店の協力をお願いし。根付く中で知り合った雑貨屋の娘、ロレアを店番として雇い。更にはこの世界で冒険者のように扱われる採集者のコンビ、アイリスとケイトを死の危機から師匠から渡されたポーションで助け。大きな借りを背負わせたことで、彼女達がお金を稼ぐために彼女の元で働く事となる。

 

「さすがに友達を見捨てて出て行くことは出来ませんよ」

 

 気が付けば友達が増えていた、大切なものが増えていた。そんなものがあるこの村に迫る、無数の魔物達。こだわる必要もないかもしれない、だが既に見逃せない理由はここにある。臆せず立ち向かう事を決めたサラサは皆を指揮し、師匠に鍛えられた戦闘術で魔物達へと果敢に立ち向かっていく。

 

ほのぼのとした空気の中、どこか優しい温かさのあるこの作品。心和ませたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。