読書感想:三角の距離は限りないゼロ6

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:三角の距離は限りないゼロ5 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、遂にこのシリーズも最終巻に突入である。春珂と秋玻、二人の間で揺れ惑う四季に願われた、選ぶと言う事。その答えを言わなければいけない時は、もうカウントダウンは始まっている。もう止まれない、選べない、は無理な選択。いわば最後の選択までの猶予期間、そこに向けて歩き出していくのが今巻なのである。

 

 

「・・・・・・かわいくありたいなあ」

 

「・・・・・・わ、わたしも、作戦は色々考えてるから!」

 

最後に自分を選んで欲しい。もう時間もなく入れ替わりの感覚がどんどんと短くなっていく中、春珂と秋玻は四季への攻勢を強め。四季もまた、どちらに、とは明白には言えずとも確かに恋をしていると言う事を感じる中、巡り来るのは新たな季節の足音。このメンバーで過ごせるのも残りわずか。このクラスがバラバラになる前に、春珂の提案によりクラスの「解散会」が開かれる事になり。実行委員会のメンバーとなった四季は、春珂と秋玻と共に場所選びから出し物の選定に至るまで、様々な事を考えていく。

 

「わたし、ずっと待ってた!」

 

 より特別にしたい、そんな願いをかなえるためにひょんな事からまた関わった九十九の結婚式の思い出からヒントを得て。クラスの思い出を集める為に駆けまわる中、春珂と秋玻の事情は徐々に周囲に共有されて広まっていく。そんな中、四季は今まで関わってきた人達の間を巡り。自分の心の在処、恋心の正体を問いかけていく。

 

「―――どっちも、違う気がする」

 

だが、問いに対する答えを求められた一人、霧香は意味深な答えを返す。自分でも言葉に出来ぬ、だがそうとしか言えぬ、二人の中から選ぶべきではないと言う答え。その答えを聞き、四季の心の中には僅かな、されど無視できぬ棘が残る。彼女の言葉の意味を考える中、解散会の会場がトラブルにより使えなくなると言う非常事態が発生し。春珂と秋玻は四季と額を突き合わせて考え、一つの結論を見出す。

 

「―――公私混同、したいと思うんです」

 

 まさに灯台下暗し、すぐ側にあった理想の会場。そこで四季はある策を仕掛ける事を決める。それは、このまま後悔を抱えて次に進まぬ為の一つの選択。彼女達の事を思うが故の、優しさから来る作戦。

 

その先にはじまる最後の十日間。もう時間は残っていない。皆で過ごす最後の時間は終わった。だがその始まりに見た四季の夢。そこにいたのは春珂と秋玻ではない、誰か。

 

果たしてその夢はどういう意味を持つのか。最後の十日間の先にどんな結末が待つのか。

 

次巻、期待したい次第である。

 

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