読書感想:僕は七度目の人生で、怪物姫を手に入れた

 

「死に戻り」と言えば、某リゼロのかの主人公と答えられる画面の前の読者の皆様も多いであろう。しかし実際、「死に戻り」とは死んで戻る訳であり、つまりは何度も死を迎える訳である。そう考えてみると、何度も形の違う死を迎えるとするのならば、精神が壊れずに済む、というのもある意味一つの才能と言ってもいいのかもしれない。

 

 

とある異世界の皇国、サウザンクレイン。その中の侯爵家の一員である少年、ヒューゴ。彼の心は今、限界を迎えていた。彼は六度もの死に戻りを経験していた。では何故彼は六回も死んでしまったのか。

 

 その理由は何と身内の凶手。全ての死に関わるのは身内。身内に六回も殺されその度に心をすり減らし。その果て、七度目。始まりの決闘を制した彼は自身の政略結婚を提案し。大公の孫娘、メルトレーザ(表紙)の元へと身売りする事となる。

 

「よく、ここまで耐えてきましたね・・・・・・」

 

最初は打算まみれの婚約、の筈だった。だがメルトレーザは彼の心の闇を見抜き、優しく受け止める。それは初めての経験、愛されると言うその実感は自分がずっと欲しかったもの。

 

味方になってくれるのはメルトレーザだけではない。メルトレーザの祖父である大公、シリルは暗殺剣しか知らなかった彼に、後継者として剣を教え。それどころか彼に押し付けられた理不尽に激怒し、全面的な支援を約束してくれたのである。

 

 七度目の人生、そこで得たもの。初めての愛、そして家族。その愛があればこそもう一人ではない。ヒューゴは自身の知る限りの全てを共有し。四年後の皇立学院の卒業式前後に待っている彼等の思惑の発露の日を防ぐために動き出す。

 

まずはヒューゴの実家との顔合わせをあっさりとこなし、更にはメルトレーザに夜這いを仕掛けようとした弟、ルイスを簡単な罠に嵌めて恥をかかせ。意気揚々と二人で、皇立学院へと入学し乗り込んでいく。

 

そこで待っているのは第二皇子、アーネスト一派との出会い。メルトレーザを侮辱したその部下と決闘でぶつかり合う事になり、圧倒的な力を見せつけて叩き潰し。六度の死を経て得た経験をもとに、易々と日々を乗り切っていく。

 

 だが、そう簡単にはやはり行かぬ。シリルに誘われ出向いた、国境近くの街に現れた賊の討伐任務。そこで待っていたのは、ヒューゴの実家の者達。六度の死の中でも知らない謎の繋がり。その繋がりの真意を探る間もなく作戦が始まり。期せずして彼等の計画のキーマンの一人とぶつかり合う中、彼等の本命の作戦が裏で静かに始まっていく。

 

「貴様・・・・・・誰に刃を向けている」

 

それはメルトレーザを狙う卑劣な作戦。だがそんな作戦をヒューゴが許す訳もなく。間一髪駆け付け怒りと共に、ヒューゴは賊へと刃を叩きつけるのである。

 

昏い過去があるからこそ救われる甘々が際立つこの作品。報われる爽快感もあり、一冊で二度おいしいと言えるのである。

 

ダークで甘々なファンタジーを読みたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

僕は七度目の人生で、怪物姫を手に入れた (ファンタジア文庫) | サンボン, 生煮え |本 | 通販 | Amazon