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読書感想:星詠みの魔法使い 2.黒水晶の夢色プロローグ - 読樹庵 (hatenablog.com)
―――さぁ、魔法使いの物語を始めよう。これはこの作品におけるキーワードでありキメ台詞、というのは画面の前の読者様ももうご存じであろう。だがしかし、この作品の舞台である学園に所属するのは誰もが魔法使いであり、己が魔法の物語を持つ者である。つまりは敵となる者もまた、物語を持っているのだ。その当たり前の事実を示してくるのが今巻であり、強敵らしき存在も姿を見せる巻なのである。
定期試験を無事に乗り切り迎えた冬休み。しかし、このソラナカルタ魔法学園においては、平和な日常が沁みてそのまま戻ってこないという通説を防ぐため、一年生の帰省は推奨されておらず。ルナとエヴァもまた学園に残る事を選び、ヨヨは二人を連れ、工房迷宮に何日もかけて潜っていた。
探索の最中、不意に遭遇した動く骨にルナが浚われ。前巻の騒動の中呪いを受けたヨヨは満足に力を振るえず。そんな彼等を救ったのが三年生であるセレスティティ(表紙左)。錬金術師であるドワーフに連なる者である。
彼女に連れられ、普段は結界で秘匿されたドワーフの隠れ里を訪ね。ルナの豪快な食事っぷりにドワーフの面々が圧倒されたり、ヨヨが子供好きな一面を見せたり。冬期休暇らしい平和な時間が彼等に訪れる。
だがしかし、平穏は長くは続かなかった。里を竜が襲撃し、その迎撃に出たヨヨが危うく魔界に飲み込まれかけ。セレスティティが自らの魔法と引き換えに、願いを叶える魔法で彼の事を救ったのだ。
願いを叶える代償に起こるのは、セレスティティの身に起きる悲劇。防ぐためには十日の間に、彼女を封印する以外なし。
「ルナ、お前はどうしたい?」
だが、そんな物語はルナが許すわけがない。そしてヨヨも許せるわけがない。唯一の方法は、魔法の鍵となる赤き星を墜とす事。その為に必要なのは、赤き星を食らう為に襲来する強大なる魔物の討滅。それを為すにはヨヨの力のみでは足りぬ。
ルナもエヴァも、ドワーフの面々の協力も取り付け。全員一丸となって始まる、星墜としの作戦。
「―――さあ、魔法使いの物語を始めよう」
その作戦をかき乱す者が乱入する。その名はフォルティス。ソラナカルタに五人しかいない最上級生である七年生であり、凡庸な印象の中に底知れぬ実力を持つ者。彼との初邂逅、仕掛けられる攻撃をヨヨは気合でしのぎ切り。そんな彼を認めフォルティスは、この学園の闇を仄めかす。
考えてみればおかしい事ばかり、果たして彼が見た「闇」とは何か。だが今は気にしている場合じゃない。乗り切らねばならぬ戦いがある。
「・・・・・・いってらっしゃい、わたしの主人公」
全ての願いを背負い、立ち上がり。皆の希望を背負い、全てを終わらせる。彼女の笑顔を取り戻す為に。
舞台そのものの闇も仄めかされる中、更なる熱さと面白さの弾ける今巻。
シリーズファンの皆様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
星詠みの魔法使い 3.運命仕掛けのアルケミスト (オーバーラップ文庫) | 六海刻羽, ゆさの |本 | 通販 | Amazon