読書感想:俺の召喚獣、死んでる

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 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様はポケモントレーナーになられた事はあるであろうか。あれはトレーナー、いわばファンタジーにおいては「テイマー」に分類される職業であろう。そしてファンタジーにおいては、「サモナー」と呼ばれる職業もまた存在している。テイマーとサモナー、皆様はどちらがお好きであろうか。何方であれば自分もなってみたいと思われるだろうか。

 

 

この作品の主人公、フェイル(表紙左)は後者、「サモナー」の卵である。しかし彼の召喚獣はある意味でとんでもない。どんだけハードモードなんだという意味の方でとんでもない存在である。

 

神達の神話が残るとある異世界。この異世界においては、召喚術師とは魔術師の上位職業である。そんな召喚術師を養成する学校、通称「学院」に通うフェイル。

 

 暇もない、金もない。そんな彼が召喚した己の相方。それは神話にも残る魔獣、パンドラ。しかしその命は既になく。頭をかち割られた死体こそが彼の相方である。

 

文字通り指一本たりとて動かぬ、正に宝の持ち腐れ。普通であればどうするんだこんなのと嘆きたくなるような役立たずにしか見えぬ相方。

 

 だがしかし、彼は諦めぬ。何故ならば最高の場で再選を約束した好敵手、王女であるサーシャ(表紙右)が待っているから。呼び出してしまったのならばと有効活用する為に知識と術を求め、彼はチームメイトと共に縦横無尽に駆け回る。

 

ある時は何故かサーシャと新刊発売のサイン会に並んだり。またある時は空に浮かぶ島に住まう古の知識人に教えを求め、チームメイトと共にカチコミが如き勢いで乗り込んだり。更にある時はチームメイトでもある貴族、シリルから貸与された魔術書を二日でマスターしてみたり。

 

 確かに認めぬ者もいる。だが、彼等を認めてくれる者だって沢山いる。彼等に希望を託してくれる人達だっている。だからこそ、負けられぬ戦いがある時だって。胸を張って立ち向かえる。

 

召喚術師達の祭典を汚すその敵は、神話に名を残せし強大なる兵器。サーシャを取り込み姿を変えたそれが迫り来る中。数多の希望を背負い、フェイルに操られパンドラが立ち上がる。

 

その向き合う様は、ぶつかり合う様は、まるで怪獣映画の如く。自身の枷を外し限界を文字通り越え。限界を超え、死線にすらも平気で踏み込み。己の願いを、心を本気で叫ぶ彼へと伝説の魔獣の死体は、死んでいる筈なのに応え、奇跡を起こして見せる。

 

「俺の召喚獣、死んでる―――だからこそ、俺がとことん生きてやる」

 

 だがこれは未だ始まりに過ぎず。ここから始まるのである。無限の世界で、色々なものを背負い込む彼の活躍が。

 

王道ど真ん中、熱さ迸るファンタジーである今作品。ファンタジー好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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