読書感想:英雄と魔女の転生ラブコメ2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:英雄と魔女の転生ラブコメ - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、この作品の主人公とヒロインであり、前世では宿敵であった護道と麻衣は前巻でようやく友達同士として一歩を踏み出した。しかし一度変化したものは、果たして本当にすぐ定着すると思われるであろうか。そんな訳はない。何せ前世では宿敵同士であっても、今生においてはお互いに特別な力はほぼ使えぬ者同士。ほぼ只人に過ぎず、そして二人の心の距離が近づくのを止める者、異世界の輩のような無粋な輩は存在していない。だからこそ、必然であったのかもしれない。今巻のように、二人の思いが少しずつ変わっていくのは。

 

 

「お前は、恋を知っているのか?」

 

「むしろ、貴方は恋を知らないの?」

 

前世で交わした疑問の言葉。お互いに「化物」と蔑まれる同士、ただその中身を入れる枠組みが「英雄」と「魔女」であっただけ。だから互いに恋も知らなかった。知らぬままにそれを罰として受け入れ、地獄に共に落ちていくばかりだった。

 

 しかしこの世界に於いては違う。只の高校生同士、友達同士として過ごす初めての夏休み。皆でプールに行って、泳げぬ麻衣に振り回されたり。皆で夏祭りに繰り出し、二人で花火を見上げたり。何気ない日々を過ごす中、護道の中で麻衣への思いが変わっていく。確かな恋へと変わっていく。

 

しかし、麻衣はそれを良しとせず距離をとろうとし、己の心を偽ろうとする。それは護道への申し訳なさもあり。彼女は未だ、魔女としての枷に囚われている。幸せになってはいけぬと自分を律しようとしている。

 

そんな彼女の隙を突くかのように、護道の幼馴染である比奈が告白せんと動き出す。拗れに拗れた二人の隙間を突き、長年の自分の思いを叶えようと。貫こうと、いつもの調子を崩し真剣に護道へと言葉を届ける。

 

今まで知らなかった彼女の気持ち、急に姿を消した麻衣への思い。二つの思いの狭間で答えを出し、護道は駆けだす。

 

「あたしが好きになった、かっこいい白石護道でいてよ」

 

その胸に、フッてしまった比奈から届けられた言葉を胸に。長年の幼馴染として、彼を好きになった女の子としての、幸せを願う言葉を胸に。

 

「―――お前が、俺を幸せにしろよ!」

 

 そう、届けたかったのはその言葉。殻に閉じこもるだけでは、立ち止まっていては始まらない。だけど未知の未来へ駆け出すのなら、きっと何かが変わるかもしれない。そしてその未来へと挑む権利は、もう持っているから。真っ直ぐに言葉を届け、思いを届け。ようやく気持ちを通じ合わせた二人の関係は、当然のように恋人へと変わる。

 

そう、この世界では本当の意味で二人で歩いていける。だからこそ、寄り添える。変わっていける。

 

だからいつかの未来、どこかの世界で。二人の関係は当然のモノに変わるのは、もう当然なのだ。

 

もどかしく拗らせた、けれど確かな甘さのある今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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