読書感想:もしも明日、この世界が終わるとしたら2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:もしも明日、この世界が終わるとしたら - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 

 さて、前巻で終わりかけた世界はどのみちこのままでは一年後に終わる事が告げられ、その中で空はユーリも、そして世界も救うと言う事を決意したわけであるが。そも、前巻で仄めかされていた空の前世、「英雄」の世界への憎悪。ここに謎を感じておられた読者様もおられるのではないだろうか。世界を救ったはずの英雄は、何故世界を憎悪していたのか。世界の滅びに英雄もまた、関わっていると言うのなら。何故そんな事になっているのだろうか。

 

 

 

その辺りが描かれていくのが今巻であり。同時にかつての英雄と獣の王に纏わる、救いようのない事実が描かれていくのも今巻なのである。

 

「・・・・・・アイ? ”好き”とは少し違うものですよね?」

 

前巻の最後の方、空からユーリへと届けられた告白。しかし、恋と愛の違いが分からぬユーリは、その感情を理解する事が出来なくて。結果的に空と共にその感情を知っていく、という結論に落ち着く中、再び日常が始まる、筈だった。

 

しかし、そうは問屋が卸さない。 ふとした切っ掛けから知った文化祭の存在。それを実施するために、放送で呼びかける中。「ヨルノヒト」と呼ばれる不死者の一体、吸血鬼のクリスがやってきて。 空にパパになってほしいと、ぐいぐいと迫りだす。

 

その迫っている所を目撃してしまって、ユーリが感情をかき乱されたり。更には文化祭での出し物の一環として、メイド服を試してみて眼福な事になったり。しかし、そこに現れたのは、クリスを狙うクリスによく似た謎の少女。その後を追う事で、判明していくのは様々な事実。

 

それは「ヨルノヒト」だからこその愛。 こんな終わりかけた世界で、人間と恋をして。 終わるからこそ、最後に浮かべていて欲しい表情は、という願い。 元英雄である空を狙っていたクリスの本当の気持ち、という嘘に隠した本当の気持ち。 彼女の姿を取る「何者か」が明かした、獣の王の真実。 何故英雄は世界を憎悪したのか、ユーリの身体の中に秘められているものは果たして、本当に希望なのか、という事実。

 

 

明かされる事実は、空の思いを苛む。 それは仕組まれた思いであったのか、その恋が叶えば、それこそは本当の意味でこの世界の希望を全て消えさせることに繋がるのではないか。分からぬ、だけどもう傍にはいられない、と。空は彼女の元を離れていこうとする。

 

「世界で一番、何よりも一番、愛してる」

 

その瞬間、知覚するのは「愛」という感情の彩。 恋を超えたその気持ち、それを今度はユーリから届け。また二人は結ばれていくのだ。

 

恋ではなく愛、恋ではないなら。そんな言葉遊びに希望を託し、また終わりかけの世界は続いていく。

 

より世界が切なくなっていくからこそ、更に鮮烈な思いが際立つ今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。