読書感想:おお魔王、死んでしまうとは何事か2 ~小役人、魔王復活の旅に出る~

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:おお魔王、死んでしまうとは何事か ~小役人、魔王復活の旅に出る~ - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、今作品は実に二年ぶりの刊行となる訳であるが前巻のストーリーを画面の前の読者の皆様はお忘れではないだろうか。お忘れと言う読者様は是非、上記の前巻の感想から復習してから今巻の感想を開いてほしい次第である。では一体、今巻では何が起きるのか。完結巻となる今巻では大切な真実、そしてクレトのとある「選択」が描かれるのである。

 

 

案内役の猟兵、ミルドレットと護衛である騎士ダンカン。そして魔王の乳姉妹であるミユリと勇者であるメルダを連れ進む旅路。その旅路は徐々に終わりへと近づき、いよいよ魔王のお墓もみえてこようとする中。前巻で預かった手紙を届ける為に、クレトは辺境の隠れ里への寄り道を決める。

 

 そこは魔族の価値観に染まらぬ者達が逃れて来て作られた村。魔族の価値観、それは美醜とは「人間からどれだけかけ離れているのか」、というもの。何故そんな価値観があるのか? そこには村に残された書物に書かれていた衝撃の事実、魔族とは人間から枝分かれし迫害された種族であると言う事が関係していた。それはこの戦争の成り立ちに関わる衝撃の事実。

 

そんな事実を知り共に受け止め。ミユリとクレトの距離は確実に近づいていく。その様子を面白くないと言わんばかりに邪魔をするメルダ。何故彼女は言葉にならぬ感情のままに邪魔をするのか。

 

 それは彼女もまた、クレトに恋をしてしまったから。だがそれは「勇者」という呪いでもあり祝福を外す鍵となる。一連の事件の黒幕、ノガ将軍の元に向かったミユリとクレトが囚われの身となる中、メルダにかけられた術式は綻び、勇者の力が失われ始める。

 

否応なく始まる決戦の中、手勢は少数、敵となるのは歴戦の将軍。その力に対抗しきれず傷ついてしまうメルダ。

 

「ごめん、僕にはもう今これしか思いつかない」

 

 そんな彼女を前に、小役人でしかないクレトは非情ともいえる決断を下す。それはメルダの恋を奪うと言う事。恋を奪い、もう一度彼女を「勇者」へ変えると言う事。

 

だが、それをメルダもまた望んだ。望んで受け入れた。大切なものはもうあるから。例え恋が叶わずとも、自分だけのものはもう持っているから。

 

「でも私はまだクレトお兄ちゃんの妹ではあるのでしょう?」

 

だからこそ彼女もまた進んでいく。魔王が復活し本格的に平和が始まり。人類側の大使として担がれたクレトとの再会を果たし。何もかも失っても、自分の中に残っていた唯一の新しいものを手に、クレトや妻となったミユリと共に歩きだす。

 

一気に駆け抜ける中、独特の温かさのある今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

おお魔王、死んでしまうとは何事か2 ~小役人、魔王復活の旅に出る~ (講談社ラノベ文庫) | 榊 一郎, 鶴崎 貴大 |本 | 通販 | Amazon