読書感想:塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い6.5

 

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読書感想:塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い6 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、今巻はシリーズ初の短編集であり、春夏秋冬くるりと回して一巡り、四季を題材として押尾君と佐藤さん、そして周りの仲間達の日々を描いている訳であるが、ふと思うのは既に四季を題材と出来るほどに、二人が出会ってからの時間が積み重なっていると言う事である。一年をかけてじっくりと紡いできた二人の、皆との時間。今巻はそんな積み重ねをじっくりと楽しめる巻なのである。

 

 

「押尾君、私のチョコ欲しかったの?」

 

バレンタイン、押尾君の反応に勝ちを確信した佐藤さんにウザ絡みされたりするも、ちょっとした事実の判明を切っ掛けに結局佐藤さんが負けてしまい、本命チョコを渡せなかったり。

 

「―――というわけで今日一日筋肉をいじめ倒そうね、颯太」

 

雪が積もって雪合戦、何故か押尾君が景品として据えられ最後には筋肉を苛め倒すことになってしまったり。

 

佐藤さんが熱を出してしまってお見舞いに行ったら、見ようによっては破廉恥なシーンを目撃されてしまったり、いつものメンバーでお花見に行ったらやっぱり大騒ぎになってしまったり。眠れぬ佐藤さんが押尾君と深夜の通話で会話に花を咲かせたり。

 

携帯ゲームで押尾君に対する思いと気持ち悪さを自覚してしまったり、父の日に特製のパンケーキを作ってみたら父親である清左衛門が死にかけたり。

 

「―――仕方ねぇ、二人で初詣するか」

 

そんな日々の中、佐藤さんが周りと徐々に馴染んでいったり、蓮と円花の間の微妙な距離が少しだけ近づいたり。

 

「―――チョコレートは特別な時に、特別な人と食べるから、特別なお菓子なんだよ」

 

そしてやっぱり、佐藤さんが少しだけ勇気を出して。押尾君の何気ない一言に驚いて心の距離が近づいたり。

 

 四季が巡ってそれぞれの思いが巡って、心の距離が近づいて。何気ない日常を重ねる中でほのぼのと、まるで微睡むように。何気ない甘さと優しさの中で、それぞれの様々な顔が見えて日常の中の何気ない当たり前の面白さがあって。そんな何気ないこの作品だからこその面白さが、少しだけ形を変えて繰り広げられる今巻。大きな動きは無いけれど、偶にはこれくらい穏やかであっていい。そんな心が優しくなって温かくなるかもしれぬ今巻。

 

だからこそ、シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い (6.5) (ガガガ文庫 ガさ 13-7) | 猿渡 かざみ, Aちき |本 | 通販 | Amazon