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読書感想:塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い3 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻では夏休み、その中での押尾君との恋人同士としての絆を一歩深めた我等がヒロイン、佐藤さん。彼女は恋人同士としての絆を一歩深めると共に、アルバイトでの様々な人達とのかかわりを通じて、確かに成長を遂げていた。そんな心の成長は、学校生活といういつもの場所、自分が未だ誤解されたままの場所でも、己を変えていこうと彼女の背を押す。
「それだけじゃ、いつもと変わらない気がして・・・・・・」
自分を変えたい、だからこそ一歩踏み出したい。変化を決意する彼女は、学園祭である桜華祭までに友達を作る事を決意する。
そんな彼女が目を付けた相手、それは級友であり演劇同好会会長の澪。折しも時節は桜華祭の準備で盛り上がっていく最中。学園祭の準備を生かし、彼女に接近しようと試みる佐藤さん。
「バカにされた・・・・・・っ!」
だがしかし、澪はまるで塩対応と言わんばかりに佐藤さんを拒み、素っ気なくしようとしていた。そんな彼女の心の中にあるのはちょっとした過去の因縁。そこから導き出された、「佐藤さん」という存在への虚像である。
それを知ってか知らずか、めげる事無く諦めず、何度もトライしようとする佐藤さん。だが、彼女を見守る押尾君の心中には何やら、言語化しづらい初めての気持が芽生え始める。
その気持ちがぎこちなさを招きだし、少しずつ何か妙な空気を孕みだす二人の関係。更にそこへ水を差さんとするお邪魔虫共の影。その名は「塩対応の佐藤さんファンクラブ」。彼女にフラれた被虐趣味者共の、塩対応な彼女を取り戻さんとする邪な思惑。
「・・・・・・俺はこれ以上佐藤さんが変わっていくのが、怖かったのかもしれない」
ようやく言葉に出来た彼の、どこか子供っぽい感情すらも押し潰すように邪な思惑は弾け、その余波が演劇同好会の舞台を壊してしまう。
だが、ここからが今までの佐藤さんとは違う。今までだったら、立ち止まり手を伸ばせなかったかもしれない。けれど今、その手は成長した心に支えられ、背は成長に押され一歩踏み出す。
彼女の提案により皆で挑む即興劇。妨害も何のそのと、可能性をこれでもかと発露させ、道筋は今この場で決めると言わんばかりに作り上げられる、混沌の中に筋を通した即興の喜劇。
「―――そんなキミの隣を、歩きたいと思う」
その劇の中、押尾君は新たな自分の道筋を見出す。独占するだけでも見ているだけでもない。一緒に学び成長し、共に歩いていくという恋人同士としての新たなる道を。
「―――大好きな人からやきもち焼かれるのが嫌いな女子なんていないんだよ」
彼女を想い身を引くのではなく、共に一歩ずつ。だからこそ共に成長していける、歩んでいける。
再びの試練を乗り越え、ビターも乗り越え恋人同士として更に一歩、新たなステージへと進んでいく今巻。
シリーズ読者の皆様は是非。今巻もまた最高であるから。
塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い (4) (ガガガ文庫 さ 13-4) | 猿渡 かざみ, Aちき |本 | 通販 | Amazon