読書感想:塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い7

 

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読書感想:塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い6.5 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、ゆっくりこつこつと絆を深め、恋人同士として一段階ずつランクアップしてきた佐藤さんと押尾君であるが。画面の前の読者の皆様、お気づきであろうか。この二人、ラブコメの登場人物としては珍しく、手を繋ぐ止まりでキスもまだ、それどころかまだお互い苗字呼びであるという事を。別に倦怠期という訳でもないけれど、ちょっともどかしすぎやしないか、これが二人のペースであるのでと言われればそれまでであるが。そんな二人に、ちょっとした変化の爆弾が投げ込まれるのが今巻である。

 

 

 

―――キスってどのタイミングでしたらいいの!?

 

―――キスってどのタイミングでしたらよかったの!?

 

クリスマス、順調にデートをして絆を深めるもキスには至らず、しかしお互い内心はキスのタイミングを伺う掛かりだらけ。機を伺い過ぎて何も出来ぬ中。年末年始にかけて佐藤さんの両親が国外旅行に行くことになり。孤独を持て余した佐藤さんが戯れに押尾君を呼んだら、彼が家に来てくれることとなる。

 

「こはるお姉ちゃん、お久しぶりです」

 

 だが、来たのは彼だけではなかった。現れたのは東京に住んでいる筈の父方の従妹の雪音。小学五年生の彼女は親も無しにいきなり現れ。遅れてやってきた押尾君と共に一先ず面倒を見る事となる。

 

「颯太君は、本当に鈍いね」

 

お姉さんとしていい顔をしたい佐藤さんがオトナっぽく振る舞う中、同衾したベッドの中で小さく不満を漏らしたり。

 

「お父さん力が高い・・・・・・!」

 

雪音の面倒を見る押尾君に父性が芽生え、三人で街を周って、お休み中の級友に出会ったり。

 

楽しい日々の中、しかし二人は雪音の事が気にかかる。激辛とホラーが大好きな無表情な彼女はどうも何かから逃げているらしい、恐らくそれは母親。だが佐藤さんからすると毒親ではない。一体彼女は何を抱えているのか。

 

「―――どうして決めつけるんですか?」

 

「フツーじゃないのに頑張ってるやつの方が、偉いに決まってるでしょ」

 

いよいよ強引に迎えに来た母親との激突、その先の逃避の中で明らかになる雪音の思い。普通の人と違うからこそ頑張ってきた彼女の忸怩たる思い。それは間違っていないのだと。彼女の頑張りを肯定し、押尾君と佐藤さんは級友達と共にクリスマスをやり直すべく動き出す。彼女の好きな味を再現し、機会を設けて母親と本当の意味で向き合わせる。

 

「よし、これで全部ホントになりましたね」

 

その先、雪音によるちょっとしたイタズラで。意図せず、しかしそれが逆に気負う事無く。二人の距離はゼロになるのであった。

 

家族の温かさが心に優しい、さらに一歩甘くなる今巻。シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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