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読書感想:七聖剣と魔剣の姫 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻を読まれた読者様であればお分かりであろうが、この世界には全てを滅ぼす「天災」が訪れるまであと三年、と迫ってしまっている。そんな中、同盟を結んだサクヤとアイリスは魔剣と聖剣を集めなければいけない。だがしかし、同時に考慮しなければならぬ問題があると言うのは、画面の前の読者の皆様も何となくお察しではないだろうか。
それは何か。答えは只一つ、「生き抜く事」。何をいまさらと言われるかもしれない、だがそれは大切なのである。何故ならば転移の法が成功したとてサクヤはいつまで命が続くか分からず、魔剣と融合してしまっているアイリスは、いずれ魔剣に飲み込まれてしまうかもしれぬ。
そう、時間は有限であり、期限は同時に進行しているのである、しかも片方は残された時間も見えぬままに。どちらかが倒れても計画の続行は不可能、特にアイリスが倒れるのはマズい。そんな問題を抱える彼等に一つ、解決策にもなるかもしれぬものが齎される。それは世界に五つとない聖遺物の一つ、聖十字架のレプリカ。学院同士が競い合う魔法騎士競技大会、その最優秀選手に授与されるそれならばアイリスの負担を減らせる。その為にサクヤは大会に出場することになる。
だがやはり、魔力を持たぬと言うのは今の世界では不利に働くもの。最優秀選手が選ばれる事がほぼ確定している五対五の一騎打ち、「ナイトゲーム」に出場することは出来ず、三人チームでフラッグを奪い合う、「フラッグゲーム」で最優秀選手を目指すことになる。
けれど、何の因果か天啓か。ナイトゲームを前に魔物の襲撃で知己の相手であり大賞を務める部長が負傷してしまい、後任としてサクヤは大将を託され、強敵と対峙することになる。
その名はベルレアン。「絶対の王」の異名を持つ、魔法を使う者にとっては天敵となる魔法を持つ騎士。更に敵はそれだけではない。自身に与えた傷を相手にも与え自分だけは回復すると言う能力を持った魔剣を持つ敵が、アイリスを狙い迫りくる。
「さぁ、来るといい」
だが、サクヤにとってはどちらも敵にはならぬ。確かにその力は強いかもしれない、だが彼の剣技、そして妖刀の力の前には無力。何気ない、まるで降りかかる火の粉を払うかのようにあっさりと。払いのけて勝利を掴む。
「だから、死ぬなんてダメ。あなたは私と一緒に生き続けるの」
その全ては災厄を乗り切る為、その後の事は考えぬ。だがアイリスは強欲にその先を望み、サクヤはその言葉に少しだけその先の未来を考える。
それは叶うならば優しい未来であろう。だが、そこにたどり着くまでには一体幾つの戦いを乗り越えればいいのだろうか。それは未だ見えぬ、だがまだ二本。戦いは未だ始まったばかりなのだ。
前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。