読書感想:結婚が前提のラブコメ6

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:結婚が前提のラブコメ5 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さぁ、それでは最後の婚活を始めよう。と言うクサめな一言は忘れていただき、いよいよこの作品も最終巻、大団円である。一巻の感想を書いたのが、このブログを始めた頃であったので感慨深いものがある次第。さて、「変化」、「選択」等様々な結婚に関わる要素を描いてきたこの作品、最終巻である今巻では一体、何を描くのか。私なりに言葉にさせていただくのであれば、今巻のテーマは文字通り「幸せ」である。結婚とは誰にとって幸せであるべきなのか。そこに目を向け、触れていく巻である。

 

 

前巻の最終盤、黒峰マリッジプランナーを来訪した結衣の父親。当然、黒峰に誤魔化す事は出来ず、今、結衣が縁太郎達の事務所である白峰結婚相談所にお世話になっている事がバレてしまい。父親と大喧嘩した結衣は、縁太郎の家へと転がり込んでくる。

 

それを当然、面白く思わぬのはカレンである。それもまた仕方のない事かもしれぬ。恋敵が想い人のすぐ側にいるというアドバンテージを取られているのだから。遅れを取り戻すべく、そして決着をつけるべく。カレンはダンスパーティへと縁太郎を誘い、そこで決着を付けんと己の思いを告白する。

 

「結婚して幸せにする自信がねぇんだ・・・・・・」

 

 しかし、縁太郎はカレンも結衣も選ばぬ、という逃げへと己を突き飛ばす。かつて垣間見た、結婚が悲しい結果へと繋がってしまったとある男の悲しい顔。それが縁太郎の心を呪いのように縛り、結婚とは相手を幸せに出来ねばならぬという強迫観念を植え付けていたのだ。

 

(以下核心の部分につき、ここから先はまだ未読の読者様は覚悟の上読んでいただきたい)

 

 

「・・・・・・縁太郎は、本当にバカね」

 

「―――私はもう、幸せよ」

 

だが、そんな彼を結衣は柔らかく受け止める。次々と投げつけられる縁太郎の心の澱をよどみなく受け止め一つずつ解きほぐし。貴方がいいの、とその心を引き上げる。

 

そう、思いはここに結ばれた。故にここより始まる最後の婚活、それは縁太郎という主人公の婚活。

 

結衣の父親に本当に彼女を幸せにできるのか、と聞かれ応えられずに反対され。事態の打開のために大女優である結衣の母親の元を訪ね、今まで感じることのできなかった父親の愛を知り。

 

「俺と一緒に、結衣の幸せを守ってもらいたいんです」

 

「私たちと一緒に、お父様も幸せになってほしい」

 

 そして二人は改めて答えを選び、手を伸ばす。二人だけが幸せになるのではない、家族も、皆も幸せになるという事を。只一人ではなく、皆で。それが彼の新しい答え。その答えのままに、縁太郎は全員で共存する道を選び、未来へと歩き出す。

 

三年の後、己の楽を追う者、己が幸せを謳歌する者、母親の思いを知る者、母親へとこれからなる者。

 

そして先を往く彼女達を追うかのように、今、新たな婚活女子が舞台に上がる。新しい「結婚が前提のラブコメ」が幕を開ける。

 

 正に万感、正に至極。今、私の心から熱い涙が溢れ目が見えなくなりかけているのは、きっとここまで彼等が辿り着いたからだろう。作者様も編集者様も絵師様も、そして我等読者も一丸となり、ここまで皆で進んできた。そして我々の見つめる先、彼等は己の幸せに進んでいく。

 

だからこそ、こんなにも心が熱くなるのだ。万感の思いを込めて拍手して、手を振り送り出したくなるのだ。

 

「結婚が前提のラブコメ」、ここに迎えるは完全無欠の大団円。

 

皆様も是非、最後まで見届けていただきたい。

 

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