読書感想:霜月さんはモブが好き4

 

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読書感想:霜月さんはモブが好き3 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 誰にとってもの主人公じゃなくていい。只一人、しほの為だけの主人公であればいい。前回、母親の不器用な愛から来る思惑も叩き潰し、本格的に自分だけの主人公としての道を歩き出した元モブキャラである幸太郎。だが、二人の肝心な距離はまだ、最後の一歩が縮まっていない。未だ二人は宙ぶらりんな関係なのである。ではその最後の一歩を詰め切るには、何が必要であるのか。その答えは簡単だ。最後の一歩を踏み出させるのなら、盤外から嵐をぶち込んでやればいい。

 

 

その嵐はすぐ側、過去からやってくる。クリスマスにしほの家を訪ね、ゆるキャラみたいな外見のしほの父親と邂逅を果たしたり。信念も一緒に過ごしたり。まだ付き合っていないにもかかわらず、既に家族ぐるみの付き合いで。そんな日々を過ごす幸太郎の前、季節外れの転校生が現れる。その名はくるり。幸太郎の幼馴染であり、男の子と勘違いしていた相手である。

 

「でも、そこがあんたのいいところね」

 

「霜月と、ちゃんと幸せになってね」

 

過去に小さな蟠りもあれど、幸太郎の人の好さがあっという間に雪解けに繋がり。三角関係に発展、する事もなくしほとの仲を祝福されて。だが幸太郎は、何かを隠しているくるりの様子が気になってしまう。力になりたいと話を聞きだし、大病しているくるりの祖父の話を聞きだし。だが幸せそうな様子を見せる為、恋人同士を装おうとするも、何故か祖父には見破られ、まがい物と呼ばれてしまう。

 

そう、まがい物である。しほとの関係も、まだ本物ではない。主人公という観点でも、本物になれる訳じゃない。それでも、何とかしたいと。しほに許可を貰った上で、くるりの事を優先し。しほに送り出され、二人きりでの温泉旅行で絆を深めようとする。

 

「後は任せたぞ。彼女を幸せにしてくれ」

 

 そんな彼の最後の一歩、モードを切り替えるスイッチを入れるのは温泉で出くわした龍馬。敢えて幸太郎の事を試し、小動もしない彼の事を認め。本心からの言葉でしほの事を託し、去っていく彼。託されたものを守る為、幸太郎は再び「主人公」として立ち上がる。

 

くるりの祖父も、そしてくるりも。全員纏めてハッピーエンドに連れていくのならどうすればいいのか。やるべきことは一つ、その為ならば悪役にだって成れ。悪役として煽って憎まれ、その上で全てを繋いで見せる。

 

「よろしくお願いします」

 

そして、くるりにも促され、何も持たず、純粋な心で向かい合って。ようやく思いを交わし、始めていくのである。2人だけのラブコメを。

 

ここから先はメアリーも言う通り、語る必要もないラブコメなのかもしれない。けれどそれでも。幸せな二人の姿をもう少しだけ見ていたい、そう心から願える今巻。結実する甘さを見てみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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