読書感想:男子だと思っていた幼馴染との新婚生活がうまくいきすぎる件について

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 さて、画面の前の読者の皆様の中には「結婚」という行為は二十歳を過ぎてから行うものである、そんな認識を持たれている読者様もおられるのではないだろうか。しかし実はその認識は法律的にはちょっと勘違いしている。実は男子は十八歳、女子は十六歳から結婚することができる。では二十歳で結婚するという事とは何が違うのか。それ即ち簡単に言ってしまうのであれば、「両親の許可の有無」である。未成年であれば父母どちらかの許可があれば結婚可能であり、成年していれば親の許可なく結婚が出来る。違いと言うものはそういうものである。

 

 

そうはいっても、未成年同士の結婚と言う物は経済的な安定等の視点から見ても、あまり賛成されるものではない。では、簡単に許可が取れる場合とはどんなものなのか。

 

 創作の世界に於いて描かれる一つの鉄板として「名家同士」というパターンがある。そのような場合においては道具として結婚が用いられる事もある。

 

ではこの作品におけるカップルはどうなのか。結婚から始まるラブコメはどんなものか。そこを見ていきたい。

 

「私に、しとかない?」

 

かつて男友達だった友人、「ゆーくん」と離れた過去を持つ名家の長男、秀一(表紙右)。いずれ必要だとは分かっているけれど、今は未だと持ち込まれる縁談を切り捨てる日々を過ごす中。ある日、お見合いの場で彼は「ゆーくん」の正体である少女、唯華(表紙左)と再会し。あっさりとした軽さの告白を経て、結婚する事となる。

 

 元親友だからこそ分かり合える、けれどそこに恋愛的感情は・・・ある。女子と分かった秀一の心の中には彼女を意識する感情が芽生え。唯華の方はそもそも、十年来恋心を温め続けた愛の持ち主だったのである。

 

とんとん拍子に同棲が始まり、同じ家で暮らす事になり。クラスへ転校してきた唯華と学校では友人として振る舞う事になり。あっという間に唯華は秀一の側に居つき、自分の居場所を作っていく。

 

唯華のボディガードを秘密でしていた少年、瑛太や圧倒的コミュ力のアホの子、陽菜。実は唯華の事が大好きな秀一の妹、一葉を交えながら。少しずつ日々を積み重ねていく。

 

 唯華の料理の腕に驚いたり、二人でゲームをしたり、二人で思い出の場所を巡ったり。瑛太や陽菜を交え皆で勉強会をしたり、出かけたり。取り戻していくあの日のような距離感、唯華がプロデュースし訪れた友人がいる日々。大切なものを積み重ねていく中、あと一歩がもどかしくて踏み出せなくて。それでもお互いを意識していく、恋心が重なっていく。

 

あの日と変わらぬ友情の上、新たに重ねるは「夫婦」としての恋心。だからこそ、何となくから始まったその関係が「本物」に変わるのは当然の事で。

 

「すっごく、幸せっ!」

 

 だからこそ、唯華の祖母の襲来も乗り越え秀一の十八歳の誕生日。二人は「本物」の夫婦となり、確かな関係として新たな一歩を踏み出すのだ。

 

恋から始める、それが普通。でも結婚から始めたっていい。変に縺れるのではなく、真っ直ぐに描くことでそんな甘さをこれでもかと引き出す。故にこの作品はラブコメとして一つの完成形と言っても過言ではないかもしれない。

 

甘さ溢れる真っ直ぐなラブコメを読んでみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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