読書感想:俺のクラスに若返った元嫁がいる

 

 さて、今の時代は晩婚化、及び未婚化が進んでおり、それが少子高齢化社会に拍車をかけている、と声高に叫ばれているが、何故我々は結婚はいいや、と思うようになったのであろう。結婚しなくとも人生を充実させることができるからであろうか。それとも、パートナーが必ず必要となるような時代ではなくなってしまったからであろうか。そんな話はともかく、今の時代の初婚年齢は着実に上がり始めていると言う訳である。ラブコメのような卒業後即結婚、なんて事態は中々発生しないのである。

 

 

そんな事実に反発するかのように、二十七歳で結婚四年目の夫婦である航平と柚香(表紙)。しかしお互いの生活リズムの違いがすれ違いと冷え込みを招き、ぶつかり合いの果てに二人は離婚の道を選ぼうとしていた。

 

 だがしかし、それは神様の悪戯か。離婚届を出したその日に二人してトラックに撥ねられ。気が付いた時には二人はそれぞれ高校入学の日にタイムスリップしていた。そして実は高校時代は交流が無かっただけで、二人は同じクラスだったのである。

 

航平は家で寝言で自爆し、柚香は最初の自己紹介で自爆し。お互いが未来の記憶を持っている、というのが分かり二周目の平穏な生活を守る為、お互いに話し合い「不干渉」であると選ぶ二人。

 

 けれど、そうは問屋が卸さなかった。元々大学時代に趣味が合う者同士として仲良くなり、結婚した二人。その二人が高校時代から同じ趣味を持っているならば、行動範囲が被らぬわけがなく。気が付けば行く先々にお互いがいる、という事態が多発していくのである。

 

入学しようとした部活まで同じ、趣味活で訪れた映画館まで同じ。不干渉を貫くはずが結果的に関わるしかなくなり、なし崩し的に嫌々ながらも関わり始める二人。

 

 その関りが、お互いの心をまた繋げていく。あの日の絆が、時を早めまた芽生えていく。一緒にいる事が苦ではなくなっていく。そしてすぐ身近にいた十年後に急死する推しの漫画家を救うために奔走する中で。もう一度お互いの心に向き合い、二人は自分の気持ちを見つめていく。

 

「・・・・・・そうだよな。ほかにも問題はあるけど、俺たちなら乗り越えられるよな」

 

愛する思いは、再び芽生えてこの心に。それはお互いに持っている気持ち。そして、今の自分達には未来の知識がある。未来に起きる問題が分かるからこそ、その全てに対処できる。ならばこの思いを阻むものはもう何も無い。だからこそ、もう心のままにと言わんばかりに。二人が復縁の道を選ぶのは、きっと必然であったのだろう。

 

この作品は言ってしまえば、タイムスリップを切っ掛けに一組の夫婦が恋人としてやり直す、ただそれだけのお話である。しかしそれが故にラブコメとして真っ直ぐであり。だからこそ王道的に面白いのである。

 

真っ直ぐなラブコメを読んでみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

俺のクラスに若返った元嫁がいる (講談社ラノベ文庫) | 猫又 ぬこ, 緑川 葉 |本 | 通販 | Amazon